思い出に残る闘い(2)
~20世紀の巴御前、Mrsキャロル・ヤコブの大活躍
注:巴御前・・・武勇をもって知られる平安時代末期の女性、源義仲に仕える女武者で各地に転戦し功を立てた。
前回記述した1976年10月にロンドンで行われた世紀の対決後、藤田はアメリカを凱旋し、アメリカではオセロブームが沸き起こっていました。
1977年2月には全米1を決めるオセロトーナメントが行われるようになった…。そして、そのトーナメントで巴御前のように男子の強豪選手を次々と打ち破って優勝したのは、Mrsキャロル・ヤコブ(MTユニオンカレッジ数学講師、27)でした。女性が優勝したのは初の快挙!(チェス・囲碁・将棋・オセロを通じて)

1977年10月に帝国ホテルで行われた第1回世界オセロ選手権大会に紅一点アメリカ代表として参加したヤコブ選手は、夫が見守る中で善戦健闘してベスト4に入りましたが、そこでヘイバーグ(ノルウェーのチェス名人)に敗れて決勝進出はなりませんでした。決勝は井上博対ヘイバーグで戦われ34対30で井上が初代チャンピオンになりました。
この借りは来年の世界大会で返すと力強く宣言したヘイバーグ、同じ気持ちだったヤコブは翌年の全米オセロ選手権大会でも優勝(連覇)して、2人は優勝を目指して1978年10月29日~31日のニューヨークで開始された第2回世界オセロ選手権大会に参加。
しかし、前夜祭で引いたクジ運はヘイバーグに逆風となり、ヤコブには追い風となりました。即ち、同じ相手(全日本チャンピオン・丸岡)に負けたとしても、初戦で負けるのと、決勝で負けるのでは天地の差です。初戦で丸岡のハンマーパンチを食らって大差負けとなったヘイバーグは早くもここでアウトとなったのは厳しい現実。一方、ヤコブは決勝トーナメント(2局打)をきわどく勝ち上がって、終に決勝の檜舞台に登場、結果は丸岡に連敗しましたが、女性が世界2位になったニュースは、全米は勿論、世界各国でも評判になり目標となりました。
オセロは頭脳競技で男女には差がないと思っています。世界選手権で女性が優勝するのも決して夢では無いでしょう。その時機を目指して多くの女性プレーヤーも各国でオセロを楽しんでいます。
大きな目標ではありますが、私のコラムを読んでいる貴方(貴女)にもチャンスはあります。
心より皆様のプレーを世界大会で見られることを楽しみにしています。

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予戦Bリーグ、最初にあたってしまった 丸岡(左)とヘイバーグ
(1978.10.30 於:ニューヨーク)

キャプチャ1
戦いすんで記念写真(1978.10.31)右よりキャロルヤコブ(2位)、
筆者、リブ・アーセナル(カナダ、3位)と夫人

キャプチャ2
筆者著「オセロ」を送った時のヤコブさんからのお礼の手紙。
この著書は第1回世界オセロ選手権大会特集号で、
ヤコブさんが対局したウォック(英国)、井上、ヘイバーグ戦
井上対ヘイバーグ等の棋譜と詳しい解説が載っている。

 

 

 

                                サイン

長谷川五郎プロフィール
1932年 水戸市生まれ。オセロの考案者。
現日本オセロ連盟会長。囲碁・将棋五段、チェスも得意。
2015年3月より第40回世界大会(2016年)に向け
「オセロを創った男~五郎のオセロちょっといい話」の寄稿を開始。