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オセロ史を飾った百人の名選手の物語
フェニックスホシめぐ
(第2回)不死鳥☆打ちを巡るドラマ


あこがホシ
1.人類の憧れ・永遠に輝き続ける

Twinkle twikle little star
Hou I wonder what you are !
Up above the world so high
Like a diamond in the sky !
きらきらまたたく小さな星よ
あなたは一体何なのか!
世界の上にあんなに高く
空の中のダイヤモンドのようだ!

 この有名な詩の作者ティラーは、毎夜同じ位置でダイヤモンドのように美しく輝き続ける1つの星を窓から見ながら、広大な宇宙の神秘に思いをはせていたことでしょう。
 人間は永久に生きることを願い、再生を信じて5000年程前にピラミッドを造りました。竜宮城の乙姫様は、浦島太郎の年齢を玉手箱の中にしまい込み、そのお陰で300年経っても浦島太郎は3年しか年をとりませんでした。アラビアの不死鳥(フェニックス)は500年ごとに再生を繰り返し永久に生きるとされている伝説上の鳥です。これも皆、いつ迄も生きたいという人間の願望の産物です。
 現実の世界では、人類が誕生して約200万年、今迄生きてきた人間の数は兆を超え京(けい)に達しているでしょう。しかし、その人間達は1人残らず死んでいます。これからも同じで、例外はありません。一方、北極星は、人類の誕生の何千倍も前から北の空に美しくきらきらとまたたき輝き続け、これからも永遠に輝き続けるでしょう。
 オセロの☆(ホシ)も、そこに置かれた石は不死鳥(フェニックス)になり、北極星のように定位置で永久に不変・不死です。



ホシ
2.☆打ちを巡るドラマ

(1) ☆打ち!そしてヤスリ攻め (辻嘉一郎五段) (三越本店での公開対局)
(2) 明暗を分けた☆打ち (篠崎幸子五段・北村蓉子四段) (第1回全日本オセロ選手権女子の部決勝)
(3) ☆打ちしたために負けてしまった (山中真美五段・大柳真咲五段) (第28回全日本オセロ選手権女子の部決勝)
(4) 事実上の世界一決定戦といわれた大一番のX打ちと☆打ちの攻防 (村上健七段・中島哲也名人) (第26回全日本オセロ選手権無差別の部決勝)

第1回全日本オセロ選手権大会終了直後の記念写真。1973.4.7於帝国ホテル


男子の部決勝・辻嘉一郎氏(左)と下原章憲氏。辻氏2連勝。

女子の部決勝・北村蓉子さん(左)と篠崎幸子さん。篠崎さん2連勝。

初代全日本オセロチャンピオンになった辻嘉一郎氏(右)と篠崎幸子さん。

 全日本オセロ選手権大会は、世界で最初に開催されたオセロ大会で、以後毎年多数のオセロファン参加のもとに盛大に行われている伝統と権威を誇る大会で、今年で満30年になります。世界大会はその4年後から、名人戦はその7年後から、ヨーロッパオセログランプリはその11年後からそれぞれ始まってます。
 新婚の辻氏は、「この優勝は妻への何よりのプレゼントになりました。」と挨拶して30年。3人のお子様は既に社会人、本人も現役のバリバリ。篠崎さんはその後結婚して浜尾姓になり、この5月にはソニー勤務のお嬢さんが結婚されるとのことです。☆打ちを巡るドラマは沢山ありますが、初代全日本チャンピオン・辻氏、篠崎さんにちなんで、今回は最近の全日本選手権大会決勝から2局題材を追加しました。


ホシ
(1)☆打ち!そしてヤスリ攻め (辻 嘉一郎五段)

 オセロの☆打ちは、絶対不変不死の場所で、オセロ特有のものです。ゆえに無条件で相手に☆打ちされるようなことになれば、次に来るヤスリ攻めは強力で、防ぎ切れずに結局大差の負けになるでしょう。全日本チャンピオンと一般人が打つと大抵そういうパターンになります。辻嘉一郎氏が三越本店で行った公開対局でお客様と打った実戦例が下図です。が絶妙手ではしぶしぶのX打ち。はほぼ必然の手順で、と無条件に☆打ちして、1手で11石の不変不死の黒石ができては早くも黒の勝勢です。

実戦原図  黒番
辻 嘉一郎氏の絶妙手!
しぶしぶのX打ち
ブラボーのX打ち!
必死の抵抗
平凡に受けて、白の動きを催促
しぶしぶのC(及びX)打ち
11個の確定黒石の出現!
白パス。黒ヤスリ攻め開始!
ヤスリ攻め第2弾(確定黒石17)
しぶしぶのC打ち
ヤスリ攻め第3弾(確定黒石25)
実戦総譜 黒64石勝ち

 辻嘉一郎(全日本チャンピオン)
 お客様
(於三越本店.1973)


 ヤスリ攻めとは、☆打ちされた石を根城として、その近くの相手方の石をヤスリでけずり取るように次々と完全に呑み込んで しまう強力で確実な攻めで、上図ののように1手打つごとに確定黒石はぐんぐんふえて行きます。
 実戦では右図の総譜のように白は全滅してしまいました。

注1 チャンピオン対一般ファンとの対局はオセロ普及のための重要な要素の1つです。チャンスがあれば、又はチャンスを作ってどんどん挑戦して下さい。岡山在住A氏一家は上京して中1の子息対時の全日本チャンピオン笠原孝一氏との1対1の真剣勝負の実現(1石対63石)。対局終了後、観戦のA氏は「どうして1石だけ残ったんだろう?」といって首をかしげました。

将棋有段者の山田史生氏(右)はよく読んで頑張って、世界チャンピオン井上七段相手に、よく1石を残しました。
 右掲の写真は、読売新聞の山田記者(現在、将棋観戦記者)と時の世界チャンピオン井上博七段(現在はニューヨーク在)のオセロ真剣勝負(1石対63石)。
 この話を伝え聞いた山陽放送の女性アナウンサーが正式に筆者にオセロを挑戦(1石対63石)。これは放送されました。
 2002年秋、テレビをご覧になった方はご記憶のことと思いますが、囲碁界の巨人・武宮正樹九段と第6代オセロ世界チャンピオン谷田邦彦七段(現パイロット)とのオセロ対局が放映されたのには驚きました。(0石対64石)。
 ここで未来の話を1つ。2003.3.8(土)には、水戸祭りオセロ大会が開催されます。その席上10:00〜3:00迄第21代オセロ世界チャンピオン・末國誠七段による10面打ち対局が行われます(挑戦及び観戦自由)。10人の中で1番多く石を残した人(例えば10石対54石)には記念品を進呈し、次の10面打ちを開始する方式。水戸市は勿論茨城県在住のオセロファンは、“終盤の魔術師”末國オセロをじかにご堪能(たんのう)下さい。もし、勝った方には、デラックスオセロ(打ち心地最高の盤・石\35,000円)をプレゼント!


第1回全日本選手権大会
女子の部決勝2番勝負第2局
黒・篠崎幸子〜白・北村蓉子
(1局目篠崎さんの22石勝ち
1973.4.7於帝国ホテル)
ホシ
(2)明暗を分けた☆打ち

 1局目22石負けのハンディを背負った北村さんとしては、2局目22石以上かつことが絶対条件で、たとえ21石勝っても判定負けになってしまいます。
 実戦原図は白番で白優勢ですが何石位良いかは微妙です。
実戦原図  白番
正解1図
正解2図
正解3図 次は黒番



 実戦図からは、正解1〜3図が最善手順です。正解3図では、Cが白の余裕手で次が黒番ですから白必勝ですが、問題は次に黒C1なのか黒C2なのか大いに迷わされる局面で、もし、実際に白が正解1〜3図を打っていたら、初代女子チャンピオンに北村さんがなっていた可能性は50%でした(黒C1なら白28石勝、黒C2なら白20石勝)。

 しかし実戦で打たれたのは下図の☆打ち(大悪手.22石損)。この白☆打ちが明暗を分けました。というのは、と☆打ちしたために下辺Cが天王山(双方急所)になってしまったからです。
(実戦の続き)
大悪手の☆打ち
黒、天王山に打つ
と天王山に打たれてはここで形勢逆転です。まして22石のハンディのある北村さんの初タイトルの可能性は全くなくなりました。
 正解1図は「天王山は絶対打て、相手に打たすな」の格言通り、相手の天王山打ちの筋をあらかじめ巧みに消しているのに注目して下さい。
 さかのぼって、黒47のX打ち作り(Xの白石をあえて黒石に変える)が、篠崎さん独特の実戦心理をふまえた上での誘いのすきで、それにまんまと乗って北村さんが☆打ちしてしまったというのが実情のようです。
第1回全日本オセロ選手権女子の部決勝2番勝負第2局(1973.4.7)

黒・篠崎幸子37〜27白・北村蓉子(篠崎さん2連勝でタイトル獲得)
 1手の☆打ちが明暗を分けた1局でした。北村さん(医師)の10才の子息(第1回少年少女チャンピオン)も現在医師。
ホシ
(3)☆打ちしたために負けてしまった

第28回全日本選手権大会
女子の部決勝1番勝負
黒・山中真美〜白・大柳真咲
2000.7.30(日)於日本青年館
 光陰は矢の如しで、本局は上記対局より27年114日後になります。
 27年といえば、世代一回転の年月で、当時サンタクロースよりオセロファンをプレゼントされた少年少女達が、今度は自分がサンタクロースになってその子達にオセロをプレゼントする立場になります。そういう訳で大会で活躍するオセラーの年令は、昔も今もそんなに変わっていません。初代チャンピオンの辻氏28才プラスマイナス10才でその後の29人の全日本チャンピオンの年令がスッポリとその中に入ってしまいます。
 現在の女子オセロ界は四強の時代といわれています。大柳真咲女流名人三冠(オセロ、88オセロ、グランドオセロ)、木下央子全日本女子チャンピオン、山中真美五段、佐野洋子五段の4人で、大柳、山中、佐野さんは全日本女子複数回優勝の実績を持ってます。
 本局は、全日本オセロ女子3度目の優勝と、秋にアンデルセン童話でおなじみのデンマークで開催される第24回世界オセロ選手権大会日本代表の座を賭けた大一番です。
(黒47迄の局面)
実戦原図  白番
(実戦)
☆打ちしたために天王山出現
(実戦)
と天王山に打って黒勝勢

 黒43(b2)は、形勢不利と見て山中さんが放った勝負手(のX打ち)で、その気迫に押されたのか白44がちょっとした緩手(正解はg8)で、局面がもつれてきた感じ。その気配を敏感に察知した大柳さんの大技白46(好手、右辺黒7石は確定石になるが、e5に白の種石ができる)、黒47はこの1手(実戦原図)。
 そこで大柳さんは、早速e5の種石を利用してと☆打ちして右辺の損を左辺で取り返そうとしたのですが、この☆打ちはそれによって天王山が出現することを見落とした大悪手(30石損!)で、と天王山に打たれて逆転です。
 「☆打ち、そのために天王山が出現してそこに打たれて負け」のこのパターンは、27年114日前の篠崎〜北村戦とそっくりです。本局をあえてこの場所に載せた狙いは、双方を比較してその共通点から、☆打ちそのものが敗因になることも結構あること、天王山理論を知って頂きたかたからです。

注2「天王山は絶対打て。絶対相手に打たすな」・・・オセロの格言。
 天王山は京都にある山で、その昔、羽柴秀吉と明智光秀が戦った時、天王山の占領を争い、秀吉の手に帰し、それが両軍の勝敗を決したことから、勝敗の分かれ目を一般に天王山といいます。



 実戦原図よりの正解手順が下図です。要するに白は、黒に天王山を打たせないように打ち進めればよかったのです。
正解1図 1石2鳥の好手!
正解2図 最強の抵抗!
正解3図 ☆打ちして白勝勢

 は、黒の天王山打ちの筋を消しながら余裕手を2個(a1の☆とa8の☆)を作った1石2鳥の好手です。は最強最善の抵抗ですが、ここでと余裕手を1個放出(まだa8の☆打ちの余裕手が1個残っている)して黒からの動きを催促すれば、白の必勝は疑いなかったのです(22石リード)。


第28回全日本オセロ選手権女子の部決勝
大柳真咲五段(左)対山中真美五段
3度目の女子日本一と第24回世界オセロ選手権代表の座を賭けた真剣1番勝負
記録は腰野和彦三段。2000.7.30.
第28回全日本・女子決勝1番勝負
(2000.7.30於日本青年館)

黒 山中真美 39
白 大柳真咲 25
(山中さん、史上初の3度目の女子日本一)

注3女子オセロ界も、上記四強に迫る新勢力の台頭が著しく、今後の展開が注目されます。玉家琴江、高野淑美、庄司遥香、須藤麻衣、木下浩子、工藤明子、浜岡三千代さん・・・達、一方杉山暁美、堀内恵子、竹田恭子、浜田喜久江、田中道子さん他のベテラン陣も健在。来月の第24期オセロ名人戦が楽しみです。


(4)事実上の世界一決定戦といわれた大一番のX打ちと☆打ちの攻防

第26回全日本選手権大会
無差別の部決勝1番勝負
黒・村上健〜白・中島哲也
1998.7.26(日)於日本青年館
 本局は、第22回世界オセロ選手権大会日本代表の座を賭しての大一番ですが、その時は周囲の見る目は一様に全日本無差別の部優勝者≒その年の秋の世界チャンピオンでした。実際、その当時全日本チャンピオンは滝沢雅樹、為則英司、村上健、末國誠氏と毎回変わりましたが、彼等は一様に秋に決勝3番勝負を2対0のスコアで勝って、世界チャンピオンになって帰って来ました。そして又、本局の勝者も決勝3番勝負を2勝1引分で勝って第22代世界オセロチャンピオンになったのですが、それは本局の3ケ月後のことです。
 「世界オセロ選手権大会で優勝するよりも、日本代表になる(全日本無差別の部で優勝する)ことの方が難しい。」という声は何回も聞きました。村上健氏も、1987年に全日本無差別の部決勝で敗れてからも毎回出場し続けて、その9年後の1996年に全日本無差別の部決勝で初優勝して日本代表になりその年の第20回世界オセロ選手権大会に初出場・初優勝してます(その時の日本代表3人は村上健氏、女子チャンピオンの大柳真咲さん、少年少女チャンピオンの西村隆君でした)。名人戦は挑戦制なので、2連覇、3連覇もまれではなく、世界大会の日本代表とは別の次元の棋戦とされていました。(挑戦制をやめて、名人も日本代表になれることになったのは2000年からです)。
 両氏共、本戦6連勝で、この決勝1番勝負に登場。名人2連覇中で絶好調の中島哲也名人は、全日本初制覇と世界大会初出場を狙い闘志満々、会場は水を打ったような静かさで、多数の観戦者はこの大一番の成り行きを見守っています。「調和」の中島か?「読み」の村上か?
注4 ≒は “ほぼ等しい” という意味を示す数学の記号です。

(白38手目迄の局面。白優勢)
実戦原図  黒番
(実戦)
(1図)気合満点のX打ち(最善手)!



 中島オセロは調和を重視した独特の形勢判断で、序盤・中盤戦を巧みにリードしてしまうのが特長です。
 本局でも中島名人の打ち廻しは自然流ですが、いつの間にか少しずつ形勢をリードしていって、実戦原図の時点では、白が明らかに優勢になっています。
 しかし、徒然草(つれづれぐさ)の一節にもあるように、やれやれもう大丈夫だろうと思った一瞬の気の緩みが最も危ないのです。実戦ではここから事件が起ったのです。

ぼっぱつ
勝負のX打ち(最強の最善手)から事件勃発! (以下は実戦の続き)

緩手の☆打ち(2石損)
天王山を打つ(最善手)!
安易なヤスリ攻め(6石損)
余裕手放って手待ち(最善手)
中割りして手待ち(最善手)
天王山を打つ(最善手)
返し過ぎ(5石損)、もう形勢不明
誘いのスキ。天王山Bに打ちなさい!
痛恨の敗着!逆転!

 実戦原図の局面をじっと眺めて、ハッキリ形勢不利と判断した村上氏は、ここで乾坤一擲(けんこんいってき)勝敗をこの1手に賭けた“勝負手のX打ち”を気合鋭く打ちました(1図)が、これに対し、と安易に☆打ちしたのが2石損の疑問手(正解はこちらも気合鋭くb7のX打ち)。続くのヤスリ攻めが6石損の疑問手(正解はe1に打って黒からの動きを催促する手待ち作戦)。続くが又、5石損の疑問手(正解はe1)で、もう形勢は1石差。ここで“読みの村上”のファイン・プレイが出ました。は、あえて天王山Bを出現させ(白が打たなければ黒Bと打つぞ!)、白のB打ちを誘った実に巧妙な誘いのスキであり、その誘いに乗って打った白Bが悪手(3石損)で、さしもの白の好局も、ここで終に逆転してしまいました。(正解は右上の白X打ちで、これならまだ白の1石リード)。以下は終局迄双方最善手。
注5…「天王山より勝る“絶妙のX打ち”」(オセロ大観II P270〜271参照)



 それにしても、実戦原図から終局迄、黒の打った手は全部最善手の連続で、“読みの村上”の面目躍如ですが、その村上健氏も全日本無差別の部決勝に初進出し、世界大会日本代表の座を賭けて石井健一六段と一番勝負を戦った時(1987年)は、必勝の局面を作りながら、信じられないような悪手を打って自滅してしまった苦い経験を持っています。
 本局は、序中盤は白の名局、終盤は黒の名局でした。



実戦原図からの双方の最善手順 を6手示します。

気合の勝負手のX打ち!
気合の勝負手のX打ち!
当然の☆打ち(Cは黒の余裕手?)
巧妙な捨て石作戦!
絶対の1手。但し天王山出現!
天王山を打つ(白14石リード)!

 は裂帛(れっぱく)の気合の応酬。と☆打ちして、Cが一見黒の余裕手(白からは打てない)に見えますが、が天王山作りの捨石作戦(黒Cなら、白C1で白☆が白の余裕手になり、これは黒アウト!)です。ゆえには絶対の1手ですが、いつの間にか下辺Cは天王山になっています。(は唯(ただ)取られたのではなくb5に白の種石を作ったので、白Cと打てる!)。
 と天王山に打って、黒に手を渡し、黒からの動きを催促(手待ち作戦)します。白絶対優勢です。☆1、C1の2つは、ほとんど白の余裕手です。



第26回全日本オセロ選手権大会
無差別の部決勝1番勝負
1998.7.26(日)於日本青年館

黒 七段 村上 健 33石
白 名人 中島 哲也 31石

 全盛期には、「秋場所も終わってみれば貴乃花」と川柳に読まれた大横綱貴乃花が引退しました。相撲の基本は“押さば押せ、引かば押せ”ですが、貴乃花は若い時からこの基本を忠実に守り、絶対に妥協せず、絶対に引き技を出さず、小錦のような巨漢にも結果はどうあれ、常に真っ向から勝負していました。

 本局は、中島名人にとって実に惜しむべき一局でしたが、敗因は妥協した手・白40の☆打ち、白42のヤスリ攻めの2手だと思われます。1度妥協するとズルズルと白46、白48という手も出てくるものです。これを一つの試練として21世紀のオセロ界で大きく世界で羽ばたいて貰いたいものです。
 村上氏は2度目の全日本チャンピオンになり八段に昇段。1998.11.4〜7の第22回世界オセロ選手権大会(於スペイン・バルセロナ)予選2位(予選通過)、山田亨氏21位、佐野洋子さん26位。
 いったん4位以内に入ってしまえば、ここからは3番勝負で持時間も1局40分ずつ(全日本の倍)、“読みの村上”にとってこれは鬼に金棒で恐いものなし、準決勝2連勝、決勝の相手カスパール氏(フランスNO.1のオセラー)に2勝1引分で2度目の世界チャンピオンになったのです。



(2003.2.1 長谷川五郎記)



百人の物語 > (第2回)不死鳥・☆打ちを巡るドラマ
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