正解6図は、黒Bの狙いを防いで黒からの仕掛けを催促した手ですが、白壁は厚く、黒は好形の固まったダンゴ石で、黒優勢です。次に黒A、白C、黒A1、白C1、黒アと踏み込めば、白は困った形。と言ってもこれは仮定の話であって、現実の姿ではありません。原図から実戦は上記総譜のように進行して、下図(原図 II )では白優勢、あるいは白勝勢(白12石リード)ともいえる局面です。
(黒37迄の局面) (原図 II )白番。白優勢
但し、実戦では、ここで残り時間は黒2分、白5分位です。秒読みなしの持時間20分ずつの厳しい条件。1手打ち、片手で石を返し、その返した手で対局時計を押すと同時に相手の対局時計が動き出す迄には、少なくとも数秒かかります。5分前から対局時計の長針は赤い針を押し上げ始め、長針が12の数字を指してから1秒すぎれば90゜迄押し上げられていた赤い針はパタリと元に戻り、そうなったら、即時間切れ負けです。
実戦では、時間も重要な勝負の要素です。読み切れぬまま、原図 II から気合い鋭く打った勝負手のX打ちは格好いい手で、多数の観戦者も「なる程そう打つものなのか」と感心したのですが、実はが疑問手(4石損、正解はh5)だったのですからオセロは限りなく奥深く難しく面白いゲームです。
“悪手は悪手を呼ぶ”といいます。続く勝負手のX1打ちも疑問手(6石損、正解はa7)で、差は一気に縮まりもう訳の解らない形勢(厳密にはまだ白2石リード)となって終盤戦に突入しました。
双方に疑問手(h1、4石損、正解は左下☆)、(a3、4石損、正解はh6のA打ち)が1個ずつ出ましたがこれは帳消し。ここで両者の持時間は共に約1分、この難しい局面をここから16手、殆どノータイムでパタパタと打ち切った時、両方の対局時計は針落ち寸前!途中では、黒が勝ったのではないかと皆の眼に映りましたが、白は最後にと連打して追いつき追い越して、数えてみたら白2石勝。しかも驚いたことには、最後の16手は全部最善手の連続だったのです。
大向(おおむこ)うをうならせた内容の濃いハラハラドキドキ見せ場のある決勝戦でした。