百人の物語 > (第9回)満30周年を迎えた全日本オセロ選手権大会(第31回.2003.8.2)とその周辺


オセロ史を飾った百人の名選手の物語
(第9回)満30周年を迎えた全日本オセロ選手権
大会(第31回.2003.8.2)とその周辺


1. この日全国各地から集った6部門237名の選手たち
七夕の牽牛星と織女星のように
選手代表の宣誓と八段昇段式

2. 少年よ大志を抱け
21世紀に生きるクラーク精神、少年少女ファンの育成
出場の少年少女選手達よ、丈夫で元気にすこやかに!又会いましょう
戦い終わった小学生と1対1で新ゲーム・ソクラテスを対局
I. お知らせ……21世紀第2回ソクラテス名人戦開催のご案内
II. ソクラテスとはどんなゲームか?
A.宇宙遊泳 B.真剣勝負 C.黒壇の馬 D.ツースリー
水戸祭りオセロ大会(2003.3.8)
I. 未来の話として予告(2003.2.1 記)とその結果報告
II. 水戸黄門、水戸偕楽園、水戸祭りオセロ大会
III. デラックスオセロは小学3年生が獲得

3. 第31回全日本オセロ選手権無差別の部特選譜
A. 無差別の部ベスト16人のトーナメント(1番勝負)一覧
B. 無差別の部特選譜4局
I. 1.駒野達也・黒(7段・シード・全日本チャンピオン)対 後藤宏(六段・北関東代表)
II. 2.名人・末國誠(シード)対 九段・為則英司(北陸近畿代表)
鬼神・為則と終盤の魔術師・末國の初顔合わせ
“1秒の差”すなわち“勝敗の差”!
III. 3.佐々木惣平・黒(三段・東京代表)対 木内秀行(五段・東京代表)
サファイアのように青い妖光を放つ人間味溢れる名局第3弾!
IV. 4.決勝、村上健(九段・東京)対 後藤宏(六段・北関東)
乾坤一擲勝敗をこの1手に賭けた後藤六段の勝負手のX打ち!

4. 女子の部特選譜2局と第27回世界オセロ選手権大会の予告






第9回 満30周年を迎えた全日本オセロ選手権
   大会(第31回.2003.8.2)とその周辺


1.この日全国各地から集った6部門237名の選手たち
たなばた けんぎゅうせい しょくじょせい
  七夕の 牽牛星と 織女星のように
  代表選手の宣誓と八段昇段式

 待望の第31回全日本オセロ選手権大会は、全国各地の予選を勝ち抜いてきた6部門の精鋭(無差別、女子、マスター、青年、中学生、小学生)計237名の選手を迎えて、2003.8.2.代々木オリンピックセンターで盛大に開催されました(主催・日本オセロ連盟、後援・読売新聞社、(株)パルボックス)。
 この全日本オセロ選手権大会の特徴は、北海道から九州まで、老若男女を問わず、全国オセロファン代表による年1回のオセロ祭りの色彩も濃厚だということです。天の川の両岸にある牽牛星と織女星が年に1度相会するという七夕祭りのように、普段会ったこともない日本全国各地のオセロ強豪が年1回一堂に会してオセロを楽しむ。マスターの部40才以上、青年の部39才以下の男女が対象です。北海道の小学生と九州の小学生がオセロを打つ!
 対局開始は午前10時で、6部門が同時スタート。決勝は勝ち抜いてきた6部門の選手達が、同じ部屋に集まり、机を並べて4時15分に同時対局開始、4時55分には全局終了(持時間各20分、秒読みなし)。その後、表彰等も6部門一緒という和やかさです。
 優勝は石崎孟二段・小学生(九州)、北川冠也四段・中学生(兵庫)、高島亮詞三段・青年(東京)、東條淳四段・マスター(北陸近畿)、高野淑美四段・女子(中部)、後藤宏六段・無差別(北関東)の皆さん。北川君(連覇)以外は、全員初優勝。北川君も3年生なので、今回でこのクラスは卒業です。当日の6部門の戦跡、決勝の棋譜や村上九段、滝沢八段、岩崎五段による詳しい棋譜解説等はオセロニュース79号をご覧下さい。
 世界大会をはじめ、世界各国のオセロ大会は、総て無差別の部一色です。全日本オセロ選手権大会は、厳しい無差別の部と平行して、他の部門も同時間催して絶えず新人を育てて行く努力をし続けて30年余、そこに本家日本オセロの底知れぬエネルギーの噴出の秘密があります。


後藤宏、木下浩子選手代表の宣誓

第24期名人戦(2003.3.22)で好成績(上はタイトル経験者のみ)を挙げた期待の両選手の力強い宣誓。その期待に応えて、全日本初優勝した後藤宏七段、秋の世界大会に向けて闘志は燃える!

末國誠名人への八段位贈呈式

第24期名人戦で優勝(通算3回)して、超一流オセラーの勲章といわれている八段位獲得。第27回世界オセロ選手権大会日本代表・末國・後藤・山中3選手の活躍はオセロファン注目の的!



2.少年よ大志を抱け

 アメリカ人のクラーク先生が19世紀後半(1876)、札幌農学校(現北大)で、学生たちに残した「Boys be ambitious 少年よ大志を抱け」という言葉は有名です。その時の学生でクラーク先生の教えに深い感銘をうけた新渡戸(にとべ)稲造少年(5,000円札の肖像)が、のちに第一高等学校(現東大)の校長になり、その新渡戸先生の授業を1年受けて深い感銘を受けたのが長谷川四郎少年(のち茨城大学教授・英文学・オセロゲームの名づけ親)でした。
 そうした流れを汲んで、日本オセロ連盟は第1回全日本オセロ選手権大会の時から少年少女の部を設けて多数の少年少女オセラーを育ててきました。上記の後藤宏、末國誠氏も、その昔、少年少女の部で大活躍した選手です。歴代少年少女チャンピオンの第12代後藤昭彦君は宏七段の兄、第19代末國誠君は誠八段本人です。


 ☆出場の少年少女の選手達よ、丈夫で元気ですこやかに!又会いましょう。

 昨年、小学生部門は3分の2が初出場、5,6年生が過半数、今年も同じような傾向です。地区予選が厳しく、5,6年生でないとなかなか勝ち残れないし、6年生だと次回は中学生。目まぐるしく変わります。
 入賞者の顔ぶれは、昨年は1.石井宏和・6年(東京)、2.杉山智之・6年(中部)、3.松本翼・5年(東関東)、…、今年は1.石崎孟(はじめ)・6年(九州)、2.村松大嗣 ・6年(東海)、3.中野讓(じょう)・5年(東京)、…、となっております。石崎君は、昨年九州から初出場したが入賞(8位迄)できず、ラストチャンスの今年は一気に優勝して三段獲得!「来年は僕の番だ!」と中野譲君も意気軒昂。
 中学生の部入賞者の顔ぶれは、1.北川冠也、2.平野夏輝・3年(中部)、3.立木英・3年(東関東)、…、と3年生が上位独占、3人共今回でこのクラス卒業です。この3月迄小学生の部で無敵(全日本、名人戦連続制覇)を誇った石井宏和三段も、流石にこのクラスの壁は厚く、初戦で中学生チャンピオンの北川冠也四段と当たって敗れ結局入賞もできませんでした。「中学生になってから運動部が忙しくて殆どオセロを打ってなかったんですよ。」と石井君のお母さん。少し会ってない間にぐんと背も伸びて日焼けしてたくましい体つきになってきた石井君、楽しい中学生生活を送って下さい。中学生の部で初出場・唯1人の小学生(4年)増田亮太君(東関東)が善戦健闘して見事5位入賞して初段位獲得は立派!このように次々と新人が出てくる所に、日本オセロ界の未来の明るさがあります。


小学生の部決勝、戦い終わって握手。優勝の石崎孟君(左)と村松大嗣君。

中学生の部決勝、熱戦終ってほっと一息。優勝の北川冠也君(左)と平野夏輝君。


 ☆戦い終わった小学生と1対1で新ゲーム・ソクラテスを対局

 春の名人戦の時は、オセロ大会満30周年を記念して、各部門優勝者には特別賞としてデラックス・オセロ(世界で一番打ち心地よいと定評のある盤と石。¥35,000円)もつきました。小学生には全員参加賞(3種類で選択自由、ソクラテスは10台用意)がつきましたが、ソクラテスに希望者が殺到して10台しかないので結局抽選になりました。
 今回の第31回全日本オセロ選手権大会でも特別賞としてデラックスオセロ、2位にはグランドオセロ(新製品)が出ましたが、それを狙えるのは各部門とも決勝進出者のみです。小学生部門では、スイス方式(勝ち抜き戦方式)で全員6局打ち、3時からは、その上位8人による決勝トーナメントが始まります。残り36人はそこで終了で各自参加賞を貰って帰ることになるのですが、上記の経験を生かして、今回はその36人の小学生及びその保護者一同計70人位をあらかじめ用意してある別室に案内、本日の参加賞の新ゲーム・ソクラテスを紹介するパンフレットを70人全員に配布、大盤を使って、A.宇宙遊泳、D.ツースリーのルールを説明、「時間は4時迄取ってあります。“宇宙遊泳”だと1局20分位かかるでしょうし、それでは2〜3局しか打てません。今日は最も簡単な“ツースリー”(1局の所要時間はその名のごとく2分30秒!)を希望者全員と対局します。希望者はお父さん、お母さん方でもOKで、勝った人には記念品が用意してあります。」

前に出て1対1でソクラテス(ツースリー)を挑戦する小学生
 

席を立って行列を作って挑戦待ちする小学生達。左手前で腕組みして壇上の成り行きを見つめるのはトップバッターの松本翼君「もう1回挑戦したいなあ!」
「多面打ちですか?」とあるお父さんの質問。「いいえ、前に出てきて頂いて1対1の勝負です。正確にいえば、1対70(全員がその進行を見ている!)かも知れません。」
「では、対局希望者は?」真先に元気よく手を挙げた一番前の席の少年!松本翼君・6年生で東関東地区唯一人の代表(“東関東地区予選に参加した小学生は36人で、与えられた代表枠1名は厳しすぎる。参加者の20%位の枠が妥当”との小林学ブロック長に言は傾聴すべき意見と考える)で、前述したように昨年の全日本3位、ラストチャンスの今回も追い風さえ吹けば優勝もあり得た実力者です。これを切っ掛けに挑戦者が列を作り、10人と対戦し終った時は残り20分しかなく(4.15からは6部門決勝が同時に始まる!)、行列は20人を越えている。止むなく、ジャンケンで7人に絞って、結局下記の17人の小学生と対戦(惜しくも今回は記念品贈呈者なし)。

 対戦者氏名…1.松本翼(東関東)、2.小早川主税(神奈川)、3.熊谷拓哉(東京)、4.新江広基(北陸近畿)、5.山田藤真(兵庫)、6沖川徹(兵庫)、7.平尾篤嗣(兵庫)、8.平坂真央(神奈川)、9.分部達也(東京)、10.久住亮介(新潟)、11.能丸葵(神奈川)、12.中川篤(北海道)、13.須賀偉大(北陸近畿)、14.望月貴恵(東京)、15.能丸将(神奈川)、16.浦隼将(北関東)、17.中島葉子(兵庫)の皆さん、善戦に拍手!夏休みの一時(いっとき)を皆でオセロとソクラテスを楽しんで下さい。

I. お知らせ…21世紀 第2回ソクラテス名人戦開催のご案内
  主催 日本ソクラテス協会 後援(株)パルボックス
(1) 日時 2003年11月30日(日)AM10.00〜PM4.00(昼食つき)
(2) 場所 (株)パルボックス本社(台東区元浅草3−1−3)
(3) 出場費 大人¥1000、中学生以下¥500 (但し、オセロ連盟会員は無料)
(4) 参加資格 特になし…先着50名(前日迄にTEL又はFAXで申し込まれた方、定員に満たない場合当日参加も可
(5) 種目 A.宇宙遊泳 B.真剣勝負 C.黒壇の馬 (全種目出場も可)
(6) 賞品 デラックスオセロ1台、グランドオセロ2台
(7) 申し込み先  日本オセロ連盟事務局 平倉まで
TEL 03-3843-7611 FAX 03-3843-1502

II. ソクラテスとは、囲碁、将棋、チェス、オセロに続く運なし盤上思考ゲームとして登場した新ゲームで、1組の盤と駒だけで、A宇宙遊泳、B真剣勝負、C黒壇の馬、Dツースリーの各々独立したゲームをプレーできます。A、B、Cはそれぞれ波乱万丈、変化無限のゲームで、これから毎年11月に大会を開き、近い将来大輪の花を咲かせるのではないかと期待を集めています。

A.宇宙遊泳は、宇宙界にある駒は無重力状態になるから、1手で瞬時にどこへでも移動(宇宙遊泳)できるというユニークなものです。

B.真剣勝負は、スポーツとしての用具をつけた剣道でなくて、「巌流島での宮本武蔵と佐々木小次郎との命を賭けた日本刀による真剣勝負を彷彿させる」切れ味抜群の一本勝負です。

C.黒壇の馬は、ソクラテスの最初の原型として生まれたもので、最初はその名のごとく馬の駒を使っていましたが、それが年月を経て進化し、完成した格調の高いゲームです。男女の駒が接触したとき出る火花、壮大でダイナミックに動く宇宙反射のスペクタルは時の経過を忘れさせる面白さで、また必ず結果が出る(勝負が決る)のもスカッとしています(引き分けはなし)。

 現在のソクラテス名人は、A南雲夏彦、B千葉敏生、C北島秀樹の各氏(2002.11.30大会の優勝者)。末國誠八段、河村末告オセロ第一世名人もA,B,C全部に出場して、必ずしもオセロの実力と一致しないのが面白い所です。2002.11.30の21世紀第1回のソクラテス名人戦の出場者は全員がオセロプレーヤーで、その9割が日本オセロ連盟会員で、第26回世界オセロ選手権大会も終了してほっと一息のオセロプレイヤー達の親睦会みたいな楽しい雰囲気の会でした。名人戦と銘打つと初心者は近寄り難い感じがしますが、ソクラテス名人戦は決してそうではなく、名人とも気楽に打てる大会で、初心者も大歓迎、見学も大歓迎!初心者の小学生とルールも知らないその保護者がもし第2回大会に来られた時は、小学生はA,B,C全部に出場(1局体験する度にぐんぐん身についてくるのがこの年代)、保護者のお父さん、お母さんにはまずルールブックを渡して一読して貰った上で、例えばA宇宙遊泳のルールを丁寧に説明した上で1局指導対局、よければAの部に出場(5局体験、これで完全にA宇宙遊泳はマスター)。
1家に1台ソクラテス(A.B.C.D)
パパは真剣勝負(B)
ママは宇宙遊泳(A)
私は黒壇の馬(C)
弟はツースリー(D)
の家庭チャンピオン!「私もそのうち名人戦
にでてみようかな?」(小6、M子さん談)
(ソクラテス・ルールブック裏のページの文)
小・中学生の参加賞・ソクラテスを自宅で家族全員(お祖父さん、お祖母さんも)で楽しんで頂くことになるでしょう。

D.ツースリーは、世界一簡単な運なし盤上思考ゲームで、「将来、太陽が西から出るようなことが起こっても、これ以上簡単な運なし盤ゲームが現れることはないだろう」評されたゲームの分子です。「我思う。故に我あり。」はデカルトの言ですが、運なし盤上思考ゲームをつきつめて行って最後に到達したのが“ツースリー”でした(長谷川五郎著「ソクラテスの打ち方」P172〜3)。“ツースリー”の1局の平均所要時間は何と2分30秒!勿論変化は有限ですから、これは家庭内で、又は昼休み等で楽しんで打つゲームです。


 ☆水戸祭りオセロ大会

「百人物語第2回.2003.2.1 記」で、『…。ここで未来の話を1つ。2003.3.8 土には、水戸祭りオセロ大会が開催されます。その席上、10.00〜15.00迄第21代オセロ世界チャンピオン・末國誠七段による10面打ち対局が行われます(挑戦及び観戦自由)。10人の中で1番多く石を残した人(例えば10石対54石)には記念品を進呈し、次の10面打ちを開始する方式。水戸市は勿論茨城県在住のオセロファンは、“終盤の魔術師”末國オセロをじかにご堪能(たんのう)下さい。もし、勝った方には、デラックスオセロ(打ち心地最高の盤・石¥35,000円)をプレゼント!』と書きました。
 その時の様子や結果は、朝日新聞茨城版、茨城朝日、オセロニュース78号にも写真入りで載りましたが、オセロニュース78号は会員のみに配られる小冊子、本欄は日本全国のみならず世界のオセロファンに広く公開されています。遅くなりましたが、改めてここで一筆啓上。

 庶民の味方水戸黄門(徳川光圀・家康の孫・徳川御三家の一つ水戸藩35万石の第2代藩主)は昔から根強い人気があり、テレビの「水戸黄門」も現在第32部が千回を目指して放映中。梅で有名な水戸偕楽園は、日本三公園の一つで、その敷地面積は日本一・世界二位、水戸藩第9代藩主徳川斉昭(第15第将軍慶喜の父)が丹精をこめて作りあげた自然の美を生かした傑作です。毎年2月,3月の観梅デーには、全国から多くの観光客が水戸偕楽園を訪れ、天下の絶景を楽しみます。
 水戸祭りは、三・十(み・と)にちなんで3月10日頃、盛大にいろいろな催しが行われ、その一環としてオセロ大会が取り上げられて今回がその2回目でした。実は、オセロゲーム原形発祥の地は、水戸市一の丸なのです。水戸祭りオセロ大会はグッド・アイディアですが、それを水戸名物に育て上げて行くためには、通常のオセロ大会+αが必要です。水戸梅羊かん、水戸の梅、のし梅、吉原殿中等の水戸の名菓は、色・形・味すべてに独特の個性があります。オセロは今では誰でも知っている庶民のゲームですが、これだけ毎年全日本選手権大会、世界選手権大会が行われているのに、意外にもそれは知られてなく、「へー、オセロにも世界チャンピオンなんているの?」と聞き返す人が地方では殆ど100%。囲碁や将棋の名人が一般人と対(対等条件)で打つ(指す)ことは絶対にありません。世界チャンピオンがいたとしてもそれは雲の上の人で庶民とは無関係な存在という潜在意識があったのかも知れませんが、オセロの世界チャンピオンはプロではないので、一般人と対で何局でも打ちます。世界チャンピオンと打ってる、10面打ちならその中で1位になれるかもしれない。オセロにも世界チャンピオンや名人もいることを皆に知ってもらえる。上記の“+α”を“チャンピオンの百局打ち”にして水戸名物の1つに育てたら如何。

 水戸商工会議所主催、水戸祭り第2回オセロ大会は、2003.3.9(土).10.00〜15.00に水戸市三の丸庁舎会場で一般人を対象とした独特の方式で行われました。その右の広場には水戸祭り歩く会参加の大勢の熟年の男女が4キロコース、8キロコース、12キロコースと書いた大きな幟旗(のぼりばた)の後に整然と列を組んで出発を待っています。水戸祭り最中ですから、その周辺にも多数の人もいます。
 出発前の歩く会の人々に向かって、まず、水戸祭り実行委員会長の中山義雄氏(水戸工芸デパート社長)が壇上に立って綺麗に声の通るマイクを通して挨拶。次に市の医務課長(医学博士)が壇に上って、「ボケずに健康で長生きするコツは、1.毎日適当に運動(歩く)、2.バランスのとれた食事、3.充分な休養、の3つの総合で、今日も健康のために歩くのだから決して無理しないで、8キロコースを選んでも6キロの所で疲れたと思ったらそこで止めて家に帰って休養して下さい。」という内容を手際よく3分で説明。最後に、中山氏が壇上に立って、私と末國氏を紹介、マイクを渡されたので、「適度のスポーツは健康維持に最適ですが、スポーツには頭のスポーツも入ります。歩く、オセロを打つ両方がベストでしょう。今日皆様の自由な挑戦を気楽に何回でも受けるオセロの世界一末國七段は、ギリシャのアテネで行われた世界オセロ選手権大会決勝3番勝負で、イギリスの名門ケンブリッジ大学数学科教授ブライウェル博士を2対0のスコアで下して優勝しました。今日は3時迄おりますから、オセロ世界一にお気楽に挑戦してみて下さい。」という内容を2分30秒。セレモニーは終了し、歩く会の人はそこから出発し、我々は元の場所にもどってオセロ大会を開始。
 会場前には、デラックスオセロを展示、桐の箱に入っている石だけは手にふれるようになっていて、石を1つ手の上に乗せたり眺めたりして「うーん、これは素晴らしい石だな」と独り言をいう男性客もしばしば。“勝った方には進呈”と書いてある見だし!
 大会は16人方式で、16人集まったら大会開始。10分位して又16人集まったら第2組大会開始。しばらくして16人集まったら第3組大会開始。トーナメントなので第1組は早くも1回戦終了で残り8人が2回戦開始。…。
 こちらは世界チャンピオン末國誠七段による10面打ちが開始。あちらの大会参加者の9割は小中学生だが、こちらは小学生の子が大会に参加している間のお父さん、大会で負けてしまった小中学生、通りかかった観光客等です。

“茨城朝日”の記事を引用『末國さんは10人と1度に対戦する多面打ちを披露。コの字に並んだ対戦者を前に、ほとんど立ち止まらず、

第21代世界チャンピオン・末國誠七段によるオセロ10面打ち開始。勝って、デラックスオセロを獲得する人は?
ぐるぐる回りながら打ち、10人に圧勝。ダイナミックなオセロにギャラリーの間からは感嘆の声が上がった。同市姫子から姫子小学校1年生の西良樹君と参加した母親の輝美さんは、50手を前に盤は白一色になり完敗。一緒に参加し、隣で粘る良樹君を応援する側に回った。』これが第1ラウンドで、善戦者1名(10名の対戦者の中で1番多く石数を残した人)に、「オセロの勝ち方・長谷川五郎著・河出書房新社刊」を世界チャンピオンのサイン入りで進呈。第2ラウンド、第3ラウンド…と次々と進行。
 一方、同時進行の大会の優勝者には賞品の他に2時に来れば待たずに必ず世界チャンピオンと打てる切符を発行。2時に集まった優勝者8人で、この最終ラウンドで午前から展示してあるデラックスオセロを、善戦1位者に進呈する方針。大人の男女、女子高生(3〜4人の友達の静かな応援つき)、中学生、小学生と多彩な8名で、何と小学生3年生の南部尊之君(写真)が善戦1位(8石対56石)となり、

最終ラウンドで見事1位となり、デラックスオセロと「オセロの勝ち方」を獲得した南部尊之君と末國誠七段(左)と筆者
「オセロの勝ち方」とデラックスオセロ(打ち心地世界最高の盤と石)を獲得、思わぬプレゼントに本人もお母さんも大喜びで、「水戸祭りオセロ大会」は笑いと拍手の中で大団円を迎えたのでした。

 少年少女に夢と希望を与える水戸祭りオセロ大会は快調なスタートを切りましした。“継続は力なり”といいます。茨城県在住の名選手、例えば滝沢信行第四世名人(数学の先生)や木下浩子さん(2003.3.22 第24期オセロ名人戦女子の部4位、第31回全日本大会の女子選手代表の宣誓者、ひたちなか市在住)達にもご登場頂き、水戸祭りオセロ大会が水戸名物の1つになった暁には、世界オセロ選手権大会(今迄26回のうち3回東京で開催)が日本の水戸(オセロゲーム発祥の地)で開催も決して夢ではありません。



3.第31回全日本オセロ選手権無差別の部特選譜

 A. 無差別の部ベスト16人のトーナメント(1番勝負)一覧


 上記16人は、午前3局戦って全勝した選手達。3局のうち1局でも負ければもうそこでアウトという厳しさで、出場64選手中4分の3に当たる48選手は午前中3局打っただけで失格です。上記“一覧”の準々決勝、準決勝、決勝の棋譜や解説はオセロニュースに載りますが、それ以外にもサファイアのように青い妖光を放つ人間味溢れる名局、問題局も沢山見られるのも無差別の部で、ここでは、☆1、☆2、☆3、☆4の4つを特選譜としました。


 B.無差別の部特選譜4局

  I.☆1駒野達也・黒(七段・シード・全日本チャンピオン)対 後藤宏(六段・北関東代表)

 予選リーグ第1局ですが、タイムマシンを未来へ向けて7時間回転させれば、これは第30代全日本チャンピオン対第31代全日本チャンピオンという絶好の取組みなのでした。
【闘牛A】
無差別の部予選リーグ第1局

七段駒野達也24
六段後藤 宏40
 駒野達也七段(19才、筑波大1年)は、荒削りの強打者で、昨年第30回全日本決勝でその強打が見事に決まって、強豪滝沢雅樹八段を大差で破って初優勝、規定により四段から三段飛びして一気に七段に昇段した快男子。しかし、昨年秋の第26回世界大会(2002.11.8.予選リーグ第10局、アムステルダム)では、駒野達也の大振りのハンマーパンチは空を切り、D.シェイマン(現・世界チャンピオン、オランダ)に破れ、この一敗がオセロの歴史に大きな影響を与えました(百人物語第1回で詳述)。
 駒野七段としては世界戦出場を胸に秘め、まずは全日本2連覇を狙って必勝を期して臨んだその第1局でしたが(実戦原図)、ここで仕掛けた大技(白Cなら見事な1本勝になる筈だった)が強引過ぎたため、すかさずと外されて逆に返し技1本を取られてしまいました。ここは後藤六段の機敏な対応を称えるべきでしょう。無差別の部予選リーグは、64人・32組が同時進行で、全日本チャンピオン駒野七段は静かに早くも1回戦敗退です。

迄の局面
実戦原図  黒番
駒野流大技(白Cなら頂き!)
白の返し技1本(黒敗勢)!

(正解)A打ち、1石返し、手待ち
最強・最善の応手
形勢不明  (3図)

 正解3図では、と右辺2手打ちして白に手を渡し、イが殆ど黒の余裕手だから(白イは4石返しの壁作りになる)、黒も充分打てる形勢です。


  II.☆2名人・末國誠(シード)対 九段・為則英司(北陸近畿代表)

 
対局開始前!

全日本或いは世界決勝といってもおかしくない好取組
為則(左)と末國(右)
 
対局中

同時進行の32組の予選の1つなのにこの人だかり!
【虎2】
無差別の部予選リーグ第2局

名人末國 誠32.5
九段為則英司(時間切れ負け)
 鬼神・為則と終盤の魔術師・末國の初顔合わせ

 為則氏と末國氏とは10年程の年齢差があります。為則氏の初デビューは高2(1986)で全日本と世界初制覇。エンジンがフル回転したのは大学生の時で、1988〜1990年の3年間不敗、名人、全日本、世界全部を制し、日本ではオセロ界の双葉山、世界では鬼神タメノリと怖れられ「又、今年も為則が日本代表になったと知ったとたんに、“あゝ今年も駄目だ”と外国選手は皆あきらめた」という逸話が残っています。全日本3連覇(7連勝×3=21連勝)は不滅の大記録です。
 為則独占時代が去り、新鋭金田繁氏(現弁護士、ワシントン在)が全日本を制した年(1991)に、初めて少年少女の部で優勝したのが末國誠氏でした。
 無差別の部64人は4人ずつA〜Pの16組に分かれて総当たり、各組1位のみが昼食後の16人によるトーナメントに出場できる方式がずっと続いていて、組によっては四段以下の選手のみ、上記のように七段と六段のいる組、今回のように九段と名人のいる組が生じます。強者でもどんどん負ける、しかし優勝者は最強者、それが全日本無差別です。
 為則・末國戦は期待通りの大熱戦になりました。

迄の局面
実戦原図  黒番
悪手の☆打ち(8石損)
天王山を打つ(白2石リード)!

(正解)最善最強のX打ち!
最善手の1つ!  (2図)
絶妙のC打ち!
黒6石リード  (3図)

 バイオリンの名手が名器で奏でる絶妙の音色が人々を魅了するように、2人の名手が心血を注いで打ったオセロのこの中終盤は限りなき奥深さと味わいがあります。
 実戦原図は厳密にいえば黒優勢の局面ですが、それは正解迄を正確に読み切ったならばの話です。ではB又はX1(も最善手)に打ってくるその対応も読まねばならず、その枝葉の1つである正解2図からでも、正解3図を発見することは目茶目茶に難しい(第一感、C,B,☆,C1の4つが白の連続した余裕手に映ります)!それら一連の変化を切迫した時間内で実戦原図の段階で読み切ることは人間技では不可能に近く、流石の終盤の魔術師もここで間違えました。は読み切れぬまま打った妥協の☆打ち(悪手)であり、と天王山に打たれては逆転です。末國名人ですら打てなかったのX打ち!オセロのX打ちの謎は深まるばかりです。

終局直前の局面  白番

 “1秒の差”すなわち“勝敗の差”!

 無差別の部の持時間各20分(秒読みなし)は、世界各国のオセロ大会と比べても最短最酷の条件で、そこでは1秒といえどもダイヤモンドのように貴重な1秒です。“片手返しのルール”は、選手間から提案され定着して久しい日本のルールで「片手で石を置く。同じ片手だけを使って相手の石を返す。返し終わったらその同じ片手だけを使って対局時計を押す。」迄を1手と見なし、石を返し終わってもまだ対局時計を押し終わらない中はまだ着手未完了ですから、その間に終了5秒前から鳴り続ける対局時計のピーという警告音が止めば、表示は0になり、その瞬間に時間切れ負け!
 上図の時、既に白の時間は殆どなく、を打ち、手際よく6個の黒石を返し終えたかに見えた時、対局時計のピーはピタリと止んで0表示!為則九段の負け確定(あと1秒あれば、33対31で白が勝っていた!)。
「全力を出し切りました。内容にも満足しています。その結果がタイムオーバーになったのは仕方ありません。」と談々とした口調で為則氏は語りました。


  III.☆3佐々木惣平・黒(三段・東京代表)対 木内秀行(五段・東京代表)

 サファイアのように青い妖光を放つ人間味溢れる名局第3弾をお届けします。「日本一難しいといわれている司法試験に合格するのとオセロの全日本チャンピオンになるのはどちらが難しいでしょうか?」との質問に対し、『それはオセロの全日本チャンピオンですよ。いくら難しいといっても司法試験には毎年何百人も合格してますよ。オセロの全日本チャンピオンになれるのは日本で唯1人ですからね。』と即座に明快に答えた木内氏は若手弁護士で、ベスト8に入ったのは今回が2度目という実力者。
 “3秒の勝負師”といわれ、ピタリ3秒残して悠々と打ち切る佐々木氏のオセロには時間切れはなく、昨年・今年と連続ベスト16入りの実力者。

実戦原図  は?
正解 ブラボーのX打ち!
この1手

斜め返らないのが黒の自慢
連続2手打ち。黒14石勝
(無差別ベスト8入りを賭けて)2003.8.2
【牛.大量取り】
第22期オセロ名人戦2001.5.6(参考)【虎新手】黒残り3秒
三段佐々木惣平31
五段木内秀行33
(引き分け勝)
三段佐々木惣平32
七段冨永健太32


 実戦原図で、もし1分でも時間が残っていたら、佐々木氏は正解手順を読み切ってのX打ちを敢行したことでしょう。
 しかし、現実には、この時黒の残り時間は7秒!勘で打った実戦の☆打ちが悪手(16石損)でここで逆転!佐々木氏の初ベスト8入りは成りませんでした。終局時の佐々木氏の残り時間は3秒でした。
 参考迄に、以前の佐々木氏の傑作(終局、黒残り時間3秒)も示します。


  IV.☆4決勝、村上健(九段・東京)対 後藤宏(六段・北関東)

第31回全日本オセロ選手権無差別の部決勝【闘牛】
(無差別ベスト4入りを賭けて)準々決勝 2003.8.2 【闘牛】
九段村上 健15
六段後藤 宏49
六段後藤 宏49
五段木内秀行15

(注)…同じ闘牛定石からの出発なので、比較参考として後藤・木内戦を掲載。準決勝の平川・後藤戦は途中で新鋭・平川五段(19才、大学生)の時間切れ!

 いよいよ決勝です。時刻は4時15分。10時には64人いた全国代表選手も既に62人が脱落という非情とも取れる厳しさです。トーナメント途上で村上氏に敗れた滝沢八段、駒形五段の2人は第22回全日本無差別決勝で大熱戦(オセロ大観II P250〜266)を演じたベテラン。「村上さんに負けたのですから納得します。」と語った駒形氏は当時は新鋭、今は2人の子のお父さんです。
 決勝初進出・緊張の面持ちの後藤六段に対し、5回目の決勝進出・既に世界を3度制した実績(現世界チャンピオン・D.シェイマン氏と同記録)に輝く“世界の村上”との真剣1番勝負!
「伏せ石」とは、段位又は年齢の上の者が石を1個手で伏せて盤上に置き、相手がその石の上の色を当てる方式。当たれば石の選択権(黒を持つか白を持つか)は当てた方が持ち、白を取れば“引き分け勝”(32対32になった時は勝とする)の権利は他方に移ります。当たった方は“引き分け勝”を選択することもできます。後藤六段は白を選択しました!


けんこんいってき
乾坤一擲勝敗をこの1手に賭けた後藤六段の勝負手のX打ち!
実戦原図 は?


(実戦)絶妙のX打ち!


は、闘牛内廻り定石ですが、がどの定石書にも載ってない後藤流の新手でした。“新手一生”は将棋の升田幸三の標語でしたが、は並の手を打っていたのでは巌のように立ちはだかる“世界の村上”を倒すことはできないとした後藤六段の温存していた研究の手で、ここから壮絶な打撃戦となり、優劣不明のまま迎えた左の実戦原図!  剣道の極意は“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあっれ!”といわれてますが、ここで後藤六段が打った捨て身のX打ちが絶好のタイミングの踏み込みでした。“肉をきらして骨を断つ!”の格言通りに,と肉を切らして、と天王山を占拠して一気に白の勝勢確定です。
 以下は黒の方に緩手(4石損、4石損、8石損)が出て差が開きましたが、“読みの村上”も人の子、その心の動揺が伝わってくるようです。
 一方、以下の白の打ち廻しは冴(さ)え渡り、本局は後藤六段の傑作です。


戦い終わって紳士の握手。新チャンピオンの後藤氏(左)と村上氏。

女子の部決勝。初優勝の高野淑美さん(左)と木下央子さん(昨年の優勝者)


4.女子の部特選譜2局


世界大会日本代表決定3番勝負開始前にまず握手。結果は2勝1敗で山中さん(左)の勝
(2003.8.3)
第27回世界オセロ選手権日本代表決定3番勝負、第3局【虎4】
第31回全日本オセロ選手権女子の部決勝1番勝負【虎2】
高野淑美五段20
(全日本女子チャンピオン)
山中真美五段44
(女流名人)
木下央子(シード)29
高野淑美(中部)34
(2003.8.2)

大会運営担当理事



予告…第27回世界オセロ選手権大会はスウェーデンのストックホルムで2003.10.29〜11.1 迄の4日間(初日は前夜祭)開催されます。日本代表は、末國誠八段(名人)、後藤宏七段(全日本チャンピオン)、山中真美五段(女流名人)の3選手です。




(2003.9.1 長谷川五郎 記)




百人の物語 > (第9回)満30周年を迎えた全日本オセロ選手権大会(第31回.2003.8.2)とその周辺

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