百人の物語
> (第14回)20世紀最後の10年間は、群雄割拠の時代となった(3)
オセロ史を飾った百人の名選手の物語
(第14回)
20世紀最後の10年間(1991〜2000)は、群雄割拠の時代となった。…その3
1.
1994年(平成6年)のオセロ名人戦、全日本選手権、世界選手権
A.
春、第15期オセロ名人戦、末國 誠名人の初防衛成る!
(4月5日.日曜)
☆
名人挑戦者選出大会
(3月27日.日曜)
…若武者・中島哲也の再登場
☆
第15期オセロ名人位決定4番勝負
(1994.4.3.新宿・宇宙)
第1局、第2局、第3局、第4局
出た!魔術師・末國の面目躍如のX打ち(第4局)
B.
夏、第22回全日本オセロ選手権大会、滝沢雅樹七段2回目の優勝!
(7月31日3.日曜)
☆
無差別の部特選3局
(1994年7月31日.日曜)
決勝(滝沢雅樹対駒形真之)、準決勝(駒形対為則)(滝沢対北島)
☆
X打ちを巡る攻防、X打ちは永遠の謎
例1
決勝、黒(駒形)の敗因は右下X打ちのタイミングを誤ったこと
例2
準決勝、こんなにも早く黒(駒形)が放ったまさかのX打ち
!
例3
準決勝、白(北島)のX打ち・右下か?左下か?がオセロの歴史を変えた!
C.
秋、第18回世界オセロ選手権大会
(フランス・パリ 1994.11.3〜5)
☆
日本3年振りに勝つ。滝沢雅樹見事優勝!
☆
特選譜4局
1.フェルドボーグ対滝沢(決勝第2局)
2.リーダー対滝沢(準決勝第2局)
3.滝沢対タステ(予選7)
4.ブライトウェル対滝沢(予選6)
☆
発見しにくい最善手
…決勝第2局39手目の局面
☆
間違うのも実力、相手が間違うのも当方の実力
予選リーグ第6局、黒・G.ブライトウェル対滝沢雅樹戦
敗着
を打った背景
2.
オセロ最近の話題・第20回記念オセロ王座戦の開催
(於新宿・宇宙 2004年1月3日.土曜)
A.
日本各地で、外国でも開催されているオセロ・オープン大会
B.
関東オープン・オセロ大会
(於宇宙
(コスモ)
)
とオセロ王座戦
(於宇宙)
関東オープンA級とB級は日を替えて毎月開催されている。
関東オープンA級(年12回)の総決算がオセロ王座戦(年1回)
C.
第20回王座戦
と
第12回王座戦
の上位10傑の比較
(2004年1月3日)
(1995年1月3日)
☆
特選譜4局
大沼尚文 対 村上健 村上健 対 高島亮詞(第20回)
末國誠 対 滝沢雅樹 村上健 対 末國誠(第12回)
☆
ミスター王座・大
(だい)
村上の牙城
(がじょう)
に迫る全日本青年の部チャンピオン高島の駿足
(しゅんそく)
!
土壇場の逆転劇、黒(高島)最強最善のX打ちを打たず!
第14回 20世紀最後の10年間(1991〜2000)は、群雄割拠
の時代となった。…その3
1.
1994年(平成6)のオセロ名人戦、全日本選手権、世界選手権
A.
春、第15期オセロ名人戦、末國誠名人の初防衛成る!
(4月3日、日曜)
☆
名人挑戦者選出大会
(3月27日.日曜)には、シードの全日本チャンピオン・滝沢信行、前名人・手塚博久や、地区代表の滝沢雅樹(29才.新潟.第9代世界チャンピオン.七段)、槙本浩之(28才.東海.四段)、亀本修(26才.神奈川.第9代少年少女チャンピオン.四段)、駒形真之(25才.初出場で東京代表.四段)、冨加見友博 (20才.北海道.二段.初出場)…等ベテラン新鋭計16名が熱演を展開。優勝したのは22才の若武者・中島哲也(北関東.四段)、出場3回にして2度目の優勝の快挙!
若武者・中島哲也が1度目に挑戦したのは18才の時で、鬼神為則名人に当って玉砕(3連敗)しましたが、あれから4年、逞
(たく)
しく、より強くなっての再度の挑戦で、今回受けて立つのは16才のオセロ界のプリンス末國名人で、期待通りの大熱戦になりました。
☆
第15期オセロ名人位決定4番勝負
(1994.4.3.新宿宇宙)
第1局
虎C
第2局
虎2
第3局
虎D
黒
挑戦者
中島哲也
31
白
名人
末國 誠
33
黒
末國 誠
34
白
中島哲也
30
黒
中島哲也
41
白
末國 誠
23
第4局
虎1
黒
名人
末國 誠
35
白
挑戦者
中島哲也
29
2勝1敗1引分で末國名人勝
両者共持時間をギリギリ迄使って熱戦につぐ熱戦を展開、3局目が終って末國名人の2勝1敗(石数は挑戦者リード)、第4局に総てを掛けることになりました。
さて、その第4局は、中盤戦も終り近くなって、何となく白(挑戦者)側の打ち易い局面になってきました(1図)。ここで名人が打った
は最強最善の勝負手のX打ち!絶好のタイミングで“オセロのX打ちここにあり”という感じの魔術師・末國の面目躍如のX打ち(2図)!
「しめた!ホワイトライン(☆と☆
2
を結ぶ線)に切りを入れれば、次に白☆、続いて白☆
1
は白の余裕手だ。勝ったぞ。」と喜んで打った実戦
が実は敗着となった悪手で、さしもの白の好局も
の1手で逆転(3図)です。
(1図)
第4局
は?
(2図)実戦
魔術師の打ったX打ちの魔力!
(3図)
好手に見えた大悪手。逆転!
は、末國名人防衛というオセロ史を作ってしまった1手です。3図以降、時間切迫のためか、双方に数回ずつ緩手が出てますが、再逆転の場面は1回もありませんでした。では、「2図からどう打てばよかったのか?」は、正解3〜6図です。
2図からの正解手順
(正解3図)A打ちして手待ち!
(正解4図)黒も手待ち!
(正解5図)
それからおもむろに中割り!
魔術師の面目躍如のX打ちで逆転!名人位2連覇の末國誠名人
逸
(はや)
る気持ちをぐっと押さえて悠然と
とA打ちして待つ。
を待ってから
と打つ!
(実戦)と
(正解)は結局同じ場所に打つのだが、打つタイミングが異なります。そのタイミングの差が、名人位を獲得するか否かの差でした。
(正解6図)
白優勢(4石リード!)
※
4局共、熱の入った名局なので並べて観賞して下さい。惜敗の若武者・中島哲也は、3年後に調和の中島に変身して3度目の挑戦者として登場し、3度目の正直で第十世名人になりました。
B.
夏、第22回全日本オセロ選手権大会、滝沢雅樹六段2回目の優
勝!
(1994年7月31日.日曜)
群雄割拠の中で打つ1番勝負連続の厳しさは格別で、今回も午前の段階で、末國誠、村上健の名が消えました。末國は、いぶし銀後藤宏(21才.大学生.現全日本チャンピオン)に負けたのです。午前中に48人が落ち、3連勝の16人によるトーナメントが午後始まると、中島哲也(為則に負け)、手塚博久(坂口和大に負け)の名も消えて、早くも名人戦で大活躍した選手は総崩れ。
準々決勝では、全日本チャンピオン滝沢信行(為則に負け)、坂口和大(滝沢雅樹に負け)、小塚勝彦(25才.静岡.三段.村上、後藤を破って北島に負け)、小磯正浩(30才.埼玉.二段.初出場.駒野に負け)の4人が惜しくもここで姿を消しました。
5連勝してベスト4に残った上記4選手。赫赫
(かっかく)
たる実績を持つ為則、滝沢、北島3選手と新顔のダークホース駒形。ここで駒形が大豪為則を破る大混乱!
☆
無差別の部特選譜3局
(決勝、準決勝 1994.7.31)
決勝
虎2
準決勝
虎2
準決勝
虎1
黒
駒形真之
29
白
滝沢雅樹
35
勢いに乗る駒形(黒)は一気に白を土俵際迄押し込んだのだったが、そこで読み切れぬまま打ったX打ち
が大悪手で逆転!
黒
駒形真之
33
白
為則英司
31
早くも強引に仕掛けた勝負手X打ち
!この気合い、この度胸!以後の攻防戦は見応え充分。
黒
北島秀樹
26
白
滝沢雅樹
38
勝負手のX打ち
!この局面で、恐らく最善手でしょう。ここから激しい打撃戦開始。
めぐ
☆
X打ちを
巡る攻防、X打ちは永遠の謎!
(例.1.2.3)
例1
決勝
……
黒(駒形)の敗因は、右下
X打ちのタイミング
を誤ったことです。即ち、
を
X打ち
(正解
)すれば黒の勝、
を
X打ち
(実戦)したら黒の負け。
決勝
は?
(正解)右下へX打ち(好手)!
(正解続き)黒6石リード
決勝
は?
実戦、右下へX打ち(大悪手)!
実戦では
を右下
X打ち
せず、左辺B打ち(6石損)したために白に追いつかれました。しかし、
が悪手(2石損)だったので再び黒リード。
ここで
と右下
X打ち
したのが大悪手(14石損)で黒アウト!
第22回全日本オセロ選手権無差別の部決勝
駒形真之(左)と滝沢雅樹
(正解)
(正解続き)黒2石勝
例2
準決勝
駒形(黒)対 為則戦
準決勝
は?
実戦、まさかのX打ち!
駒形真之四段、25才の柔道も有段者の警察官。大舞台で為則九段相手に、こんなにも早い時期に放ったX打ちの大技(強手)!
以後、好防猛攻を繰り返しながら全く互角の形勢のまま終盤戦に突入。終盤では双方にミスが2度ずつ出て形勢は揺り動いたが、結局黒の2石勝。
例3
準決勝
北島 対 滝沢(白)戦
準決勝
は?
実戦、勝負手のX打ち!
実戦(1図)
は?
を打った時点では形勢互角。そこから、白よし、黒よしになった1図では、左下X打ちすれば黒勝になったでしょうが、実戦は
を右下X打ち(敗着、20石損)してアウト!
もし、1図で黒が左下X打ちしていたら、決勝は北島対駒形戦になり、どっちが勝っても初優勝、世界大会初出場になった訳です。オセロの歴史に重要な影響を与えた実戦黒右下X打ちの1手でした。その後現在迄、北島、駒形両氏に全日本オセロ選手権決勝進出のチャンスは巡って来ておりません。
C.
秋、第18回世界オセロ選手権大会
(フランス・パリ 1994年11月3日〜5日)
☆ 大会3日目(11月5日)、予選リーグ上位4人による決勝トーナメント
(持時間各40分)
上記ベスト4選手は、皆、母国のオセロチャンピオンです。今回は、全日本チャンピオン・滝沢雅樹対リーダー、タステ、フェルドボーグ戦の3局、及び滝沢対G.ブライトウェル戦の計4局を特選譜としてご紹介します。
☆
第18回世界オセロ選手権大会特選譜
(於パリ 1994.11.3〜5)
決勝3番勝負第2局
虎2
準決勝3番勝負第2局
虎1
予選7回戦
虎2
黒
Karsten Feldborg
25
白
滝沢 雅樹
39
(2連勝で滝沢雅樹優勝!)
黒
I. Leader
28
白
滝沢 雅樹
36
(2連勝で滝沢決勝へ進出)
黒
滝沢 雅樹
28
白
M.Tastet
36
(滝沢5勝2敗で1日目終了)
滝沢雅樹
29才、七段、新潟市小学校教諭、第9回に続いて今回2回目の世界1!
K.フェルドボーグ
28才、デンマークオセロ連盟会長、会計士、前回6位、今回初めて世界2位。
M.タステ
フランス、28才、数学の先生、第16回オセロ世界1。今大会予選では、滝沢、山中に勝つ。
I.リーダー
イギリス、30才、ケンブリッジ大卒の数学者、第7回世界2位。
G.ブライトウェル
イギリス、31才、ケンブリッジ大卒の数学者、第12,13回世界2位(鬼神為則に負け)、世界の舞台では村上健を破り、今回も滝沢に勝つ。第21回世界決勝にも登場(3年後)。
注
タステは“百人物語”第12回で、リーダーとブライトウェルは第11回で顔写真入りで紹介した世界の名オセラー。
オセロ世界1の座を賭けて激闘160分、戦い終えて爽やかに握手を交すフェルドボーグ(左)と優勝の滝沢雅樹
団体戦3位入賞(1位フランス、2位イギリス)の日本選手団。左より、大和久道夫(理事)、滝沢雅樹(優勝杯を手に)山中真美(全日本女子チャンピオン)
予選6回戦
兔1
黒
G.Brightwell
34
白
滝沢 雅樹
30
(1図)
決勝第2局
は?
【実戦】8石損の大悪手、逆転!
【正解】1石返して手待ち、黒際どく2石リード
☆
発見しにくい最善手
…1図は極めて難解な局面で、制限時間のある実戦では、とても読み切れるものではなく、常識的な中割りを打ってそれで負けとは、黒にツキがなかったのでしょう。1図では、正解の
だけが好手で、他の5ヶ所は総て即負けになる厳しさです。苦節10年、初めての決勝進出、後のない第2局目に取って置きの新手
をだしてここ迄有利に事を運んできたフェルドボーグもここで抜かれました。終盤、
、
の気持のよいX打ち2連打で勝負あり!
(2図)
ブライトウェル(黒)対滝沢
予選6回戦
は?
【実戦】
敗着となったX打ち!
【正解】
勝利へ一歩前進のX打ち!
正解の続き(3図)
白6石リード!
☆
間違うのも実力、相手が間違うのも当方の実力!
小説「ジキル博士とハイド氏」では、同一人がハイド(悪魔の姿)になった時だけ悪事を働くのですが、オセロでは一見好手に見える悪手もあって事は単純には運びません。
2図では3つのX打ちが目につきますが、一見すると左下X、右上Xは悪手に映ります(次に黒☆と打たれてしまう!)。右下Xは偶数理論に合致し、ホワイトラインも綺麗に通って好手に映ります(実は悪手!)。
実戦で全日本チャンピオン・滝沢は右下X打ち
を着手したのですが、これはイギリスの天才・ブライトウェルの捨て身の反撃黒Bを見落としていた大悪手(正解
に比べて8石損)で、形勢はここで逆転!但し、実戦で一見悪手に見える正解の
を打つためには、その裏づけとなる3図(
〜
)の読みが絶対条件で、時間内に白はそこ迄読めなかった訳です。
日本代表・滝沢雅樹は、花の都パリで、世界の強豪と3日にわたって17局正味18時間20分の激闘、15勝2敗で世界オセロチャンピオンの栄冠を見事獲得しましたが、その2敗の相手マーク・タステ(フランス)、グラハム・ブライトウェル(イギリス)という2人の数学者も世界屈指の名オセラーです。
2.
オセロ最近の話題・第20回記念オセロ王座戦の開催
コスモ
(新宿・
宇宙
2004年1月3日 土曜)
A.
日本各地で、外国でも開催されているオセロ・オープン大会
これは、予選なしで、誰でもすぐ出られる各地で開催されているオセロファンのための大会です。当ホームページで発表されている日本のごく最近のオープン大会(正月前後)をピック・アップすると、
2003.12.21
第265回関東オープンA級(新宿・宇宙)
第186回川越順位戦
第25回北海道オープンA級(有段者)、B級(級位者)
12.23
第15回関西選手権A級、B級
12.27
第65回流山オープン
12月度 長尾(神奈川)子ども文化センターオセロ大会
12.28
年忘れオセロ大会(名古屋)A級、B級
2004.1.3
第20回記念オセロ王座戦(有段者、新宿・囲碁オセロサロン宇宙)
1.4
浜松アリーナオセロハンディ戦
等が開催されています。日本のオセロオープン大会は、老若男女を問わず、総てのオセロファンが楽しめる大会を原則として、その点諸外国のオセロオープン大会とは多少ニュアンスが異なります。外国では、オセロとは子供もできる大人のゲームであり、オープン大会は腕自慢が技を競い合い、実力を養って世界チャンピオンも狙おうという大会で、その主なオセロオープン大会を挙げると、2月ケンブリッジ国際オープン(イギリス)、4月コペンハーゲン国際オープン(デンマーク)、5月ローマ国際オープン(イタリア)、7月ブラッセル国際オープン(ベルギー)、8月パリ国際オープン(フランス)等があります。
特にそのトリを占めるパリ国際オープンは、2日かけて全員が11局打ち、その上位2人が3番勝負で優勝を決める内容の濃い大会で、ここで複数回優勝したP.ラル(フランス)、D.シェイマン(アメリカ)I.リーダー(イギリス)、村上健(日本)、G.ブライトウェル(イギリス)、E.カスパール(フランス)は、皆世界選手権優勝又は準優勝しています。
コスモ
B.
関東オープン・オセロ大会とオセロ王座戦
(於 新宿の
宇宙
)
関東オープンはオープン大会としては最古の伝統を誇る権威あるオセロ大会で、日本オセロ連盟東京支部主催で毎年A級(出場資格有段者、最終日曜)、B級(出場資格有段者でないこと、第1日曜)大会が開催され、幾多の名オセラーが育っております(於宇宙)
昨年(2003年)夏には、現役の世界チャンピオンのディビッド・シェイマン(オランダ)がA級に挑戦、9月には21世紀最初の世界チャンピオンになったブライアン・ローズ(アメリカ・現ニューヨーク在)もA級に出場しましたが、いずれも優勝はできませんでした。“継続は力なり”といいますが、それにしても関東オープンA級開催265回とは凄い記録です。
2003年12月31日夜、“人類史上最強王決定戦”と銘打ったナゴヤドームで行われたK1試合、大相撲元横綱の曙と挌闘家ボブ・サップ戦は、第1ラウンドでサップの右パンチを顔面に食った曙が2度目のダウンを喫したまま立ち上れず、サップのKO勝になりました。しかし、相撲は相手を土俵の外に出すか、組んで投げ飛ばせば勝になるスポーツで、握り拳
(こぶし)
で顔面を殴
(なぐ)
ったり、足で蹴るのは禁じ手ですが、一方、K1は拳で殴ったり足で蹴ったりして相手を失神させれば勝になる格闘競技で、逆に組んで投げるのは禁じ手で土俵もありません。K1ルールで戦えば、元横綱といえども曙の不利は明らかですが、“実際に戦ってみなければ解らない、無理も通れば道理引っこむ”のが勝負の世界で、大晦日の曙・サップ戦の瞬間テレビ視聴率は45%になり紅白を抜いたのでした。
以前、プロ将棋の大山康晴十五世名人はチェスの全日本チャンピオンでしたし、最近もプロ将棋の羽生善治名人はチェスの日本1でした。数年前に日本将棋のプロ棋士・伊藤能五段(米長邦雄永世棋聖門下の精鋭)より、「かの有名なオセロの関東オープンA級に出場してみたいが如何?」との申し出があり、それに対し、日本オセロ連盟東京支部長は、「関東オープンは勿論誰でも自由に参加できるのですが、A級はオセロの有段者が出場資格になっております。たとえ将棋のプロの先生といえども、オセロの有段者でないので出場はご遠慮願いたい。B級なら無条件で出場できますから、まずB級に出場されて、もし優勝すれば初段と認定されますから、それ以後は何回でもA級ご出場をお待ちします。」と丁重にお断りしました。すると、「それならB級に出ます。出場するからには、プロのメンツにかけて優勝を狙います。」という訳で、当日は将棋新聞の編集記者同行でプロ将棋の伊藤能五段がオセロ関東オープンB級に出場しました。結果は将棋新聞(日本将棋連盟発行)にも載りましたが、4勝4敗でオセロ4級と認定されたのでした。
さて、関東オープンA級は年12回開催されてますが、その1年の総決算及び新年度の活躍も期して毎年正月3日に新宿の囲碁・オセロサロン「宇宙
(コスモ)
」で開かれるオセロ王座戦(出場資格オセロの有段者、1人6局ずつ打ち総獲得石数も計算してズバリ順位を決める)は、世界のトップレベルのオセラーとも打てる修業の場として女性にも人気があります。錚錚
(そうそう)
たる実績を持つ歴代優勝者・村上健、滝沢雅樹、手塚博久、北島秀樹、石井健一、金田繁、中島哲也、末國誠、谷口良一等、衆知の一流オセラーだけでなく、最近は全くの新人の優勝もあるようになりました。今回(2004年1月3日)の優勝者は大沼尚文三段(当日四段に昇段)、女性1位は木下浩子二段、いずれも、世界チャンピオン、女子全日本チャンピオン経験者を破っての堂々たる優勝・女性1位であり、両人には第20回記念特別副賞として、デラックスオセロ(打ち心地世界一と定評)が贈呈されました。
南雲、平川、高島、長尾、佐藤、野田、駒形
石崎、下之園(理事)、大沼(優勝)、村上
☆第20回王座戦ベスト10傑勢揃い!
筆者、
工藤明子、
堀内恵子、
竹内友子、
佐野洋子
(二段)
(五段)
(初段)
(五段)
浜田喜久江三段、
木下浩子二段、
竹田恭子四段
☆明るく、楽しい女性選手達!
C.
王座戦第20回
(2004.1.3)
と第12回
(1995.1.3)
の上位10傑
10傑
第20回
2004年1月3日
第12回
1995年1月3日
順位
名
段
勝
負
石数
名
段
勝
負
石数
1
大沼尚文
三
6
132
末國 誠
名人
5
1
124
2
村上 健
王座
九
5
1
106
村上 健
王座
九
5
1
94
3
石崎 光
四
5
1
36
滝沢雅樹
世界C
5
1
84
4
駒形真之
五
4.5
1.5
50
坂口和大
六
4.5
1.5
88
5
野田敏達
二
4
2
76
木内秀行
五
4.5
1.5
64
6
佐藤智之
三
4
2
62
小塚勝彦
三
4.5
1.5
52
7
長尾広人
六
4
2
54
谷口良一
六
4
2
82
8
高島亮詞
四
4
2
49
金田 繁
七
4
2
80
9
平川有宇樹
五
4
2
26
滝沢信行
六
4
2
20
10
南雲夏彦
二
4
2
3
腰野和彦
二
4
2
6
第14回百人物語は1994年の名人戦(末國)、全日本と世界(滝沢雅樹)について書きましたが、年が明けた1995年正月の王座戦と、8年後の今年(2004)の正月の王座戦とのベスト10人の名を比べれば、8年という時の流れをつくづく感じさせられます。
☆ 特選譜をそれぞれ2局ずつ、計4局をお見せしましょう。
第20回オセロ王座
決定局(於宇宙2004年1月3日)
闘牛
第20回オセロ王座戦特選譜(於宇宙2004年1月3日
牛、快速船
第12回オセロ王座決定局(於宇宙1995年1月3日)
虎1
黒
王座・九段
村上 健
21
白
三段
大沼尚文
43
黒
四段
高島亮詞
30
白
王座
村上 健
34
黒
名人
末國 誠
44
白
世界チャ
ンピオン
滝沢雅樹
20
第12回オセロ王座戦特選譜(於宇宙1995年1月3日
闘牛
黒
名人
末國 誠
24
白
王座
村上 健
40
上記10傑一覧表を見ると、ミスター王座の村上健九段(優勝6回)を例外とすると、左右全部別人なのが印象的で、そこに8年という歳月の重みがあります。
初優勝の大沼三段、29才、オセロ歴8年、大会出場歴3年、主な成績は2003年10月9日の登竜門戦(オセロ連盟東京支部主催)で優勝して二段から三段に昇段したばかり。そして今回四段へ。これから、春の名人戦、夏の全日本選手権での活躍に期待!
今回は、側で直に観戦した迫力満点の熱戦譜・高島対村上戦を台材にします。高島四段は第31回全日本オセロ選手権青年の部(39才以下)で初優勝(2003.8.2)して四段に昇段、27才。2003年には九州から北海道まで足を運び何と50のオセロ大会に出場。上記第25回北海道オープンA級にも出場して6戦全勝で優勝(2003.12.21)しています。本当にオセロが好きで各地のオセラーとの交流を楽しみ、楽しみながら努力してメキメキ強くなってきているオセラー。
1図(高島・村上戦)
は?
(正解)最強のX打ち!
(正解続き)黒33−白31
2図(実戦)6石損の敗着!
土壇場の逆転劇・黒最強最善のX打ちを打たず!
ミスター王座・
だい
ミスター王座・
大
村上を相手に一歩も引かず際どい勝負を展開させていた青年チャンピオン・高島四段でしたが、難解な局面1図で終に間違えました。
“豚は太らせてから食べる”といいますが、正解の
はわざわざ5個の黒石にふやして白☆と食べられた上、直後に白Bが白の余裕手ですから、直感ではとても打てない手。両者共に時間切迫の実戦1図で、黒が常識的な
(6石損の悪手・敗着)を打って負けたのは止むを得ない推移だったのかも知れません。実戦は、時間も勝負のうちなのです。
日本オセロ連盟主催の第25期オセロ名人戦は2004年3月27日に開催されますが、無差別の部で優勝して秋の世界オセロ選手権大会に日本代表となるのは誰か?第20回王座戦ベスト10傑の選手達の名人戦での活躍は?女流名人になって世界大会出場を狙うのは?
(2004年2月1日 長谷川五郎 記)
百人の物語
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