百人の物語 > (第20回)21世紀のオセロ展望


オセロ史を飾った百人の名選手の物語
(第20回) 21世紀のオセロ展望…オセロファンによる、オセロファンのための、オセロファンの大会(その1)



1. 概論 情勢の変化と世界選手権(チェス、囲碁、オセロ)

チェスと世界選手権

囲碁と世界選手権

オセロと世界選手権

2. 21世紀のオセロ大会
A. 名人戦(春)
B. 全日本選手権(夏)
C. 世界選手権(秋)

A.I. 自由参加制オセロ名人戦無差別の部ベスト10一覧
第21期 (2000年)、ここから名人も日本代表として世界選手権に出場
第22期 (2001年)、1人の小学生が参加し、善戦し、楽しんだ
第23期 (2002年)、無差別の部一色だった名人戦に、女子、マスター、中学生、小学生の部も新設
第24期 (2003年)、自由参加制の定着、無差別の部出場者117名の圧巻
第25期 (2004年)、連覇の末國誠名人に世界一奪回の期待

誰でも気楽に参加できるオセロ名人戦 (無差別の部に初参加した地方在住の2人のオセロファンの例)

A.II. 自由参加制オセロ名人戦無差別の部 特選譜
第21期名人戦特選譜(2000.4.9.日) 全勝優勝・坂口和大(七段へ)
北島秀樹〜坂口和大   後藤昭彦〜長尾広人   谷田邦彦〜土田英二
第22期名人戦特選譜(2001.5.6.日) 全勝優勝・村上健(九段へ)
後藤宏〜村上健   宮岡環〜滝沢雅樹   末國誠〜村上健
第23期名人戦特選譜(2002.3.3.日) 全勝優勝・北島秀樹(七段へ)
北島秀樹〜長尾広人   谷田邦彦〜長尾広人   北島秀樹〜久米朋史
第24期名人戦特選譜(2003.3.22.土) 全勝優勝・末國誠(八段へ)
末國誠〜後藤宏   坂口和大〜末國誠   村上健〜末國誠
平川有宇樹〜青木和音   佐藤伸二〜亀本修   村上健〜宮野翔一郎4級
第25期名人戦特選譜(2004.3.27.土) 全勝優勝・末國誠(九段へ)
平川有宇樹〜末國誠   平川有宇樹〜後藤宏   末國誠〜村上健
高崎悠太郎〜坂口和大   石崎光〜佐々木惣平   佐野宏隆〜高野淑美

3. オセロ最近の話題
第28回世界オセロ選手権大会(於ロンドン 2004.11.12〜 )日本代表3人が決定
1. 末國誠九段(名人) 2. 為則英司九段(全日本チャンピオン)
3. 木下央子五段(全日本女子チャンピオン)
第32回全日本オセロ選手権決勝1番勝負のこの場面
…オセロのX打ちは限りなく奥深く、永遠の謎である
第25期オセロ名人戦決勝1番勝負のこの場面
…超難解な終盤のこの局面で黒(平川)は間違えた
(オセロ格言は、時によると悪手になる。)
第32回全日本オセロ選手権準優勝の坂口和大九段と家族




(第20回) 21世紀のオセロ展望…オセロファンによる、オセロファンのための、オセロファンの大会(その1)


1. 概論…情勢の変化と世界選手権(チェス、囲碁、オセロ)

 アメリカ第16代大統領A.リンカーンは、ゲティスバーグでの演説の中で「人民による、人民のための人民の政治」と述べていますが、この民主主義の基本理念は連綿として現在も闊歩しています。

 野球、相撲、サッカーも、ファンあっての野球、相撲、サッカーで、ファンを大切に育ててこそ隆盛もあるのです。頭脳競技のゲーム世界も同じで、FIDE主催で1948年から開始されたチェス世界選手権(挑戦制。3年毎にチャンピオン対挑戦者のタイトルマッチ)も、時代の要請を受けて1997年で挑戦制を廃止し、1998年からは勝ち抜き戦方式(オセロの世界選手権とほぼ同じ方式)を採用、それからは、カリフマン(ロシア)、アナンド(インド)、ポノマリョフ(ウクライナ)等の新世界チャンピオンが次々と誕生しました。特にポノマリョフは史上最年少の18才で世界チャンピオンになりました。

 囲碁は、徳川家康が家元制度を設けて手厚い保護を加え、プロ組織を作りましたが、このプロ制度は日本だけのものだったので、江戸時代、明治、大正、昭和を通じて日本の囲碁のレベルは世界一でした。時代の要請を受けて1988年より囲碁世界選手権が毎年トーナメント方式(1番勝負)で開催されるようになり、370年の伝統を持つ日本プロ棋士代表は、たちまち破竹の五連勝を飾りました。しかし、現代はドッグ・イヤーといわれています。犬は人間の7倍のスピードで生き寿命を終える所から来た語源ですが、370年の伝統もわずか6年でたちまち中国、韓国に追いつかれ追い抜かれてしまいました。現在(2004年)は第17回が終了した所ですが、第6回(1993年)から第17回迄で日本代表が優勝したのは第9回(1996年)小林光一九段のみで、あとの11人の優勝者は中国と韓国代表です。2001年6月1日発行の“囲碁年鑑”を見ると、466名の現役プロ棋士(そのうち九段は112名)が顔写真入りで大きく載っていて、確かに凄いプロ集団であるのは解りますが、ドッグ・イヤーの現代の世界の囲碁レベルは超音速のスピードで日本のレベルを抜いてしまったのでしょうか?

 今年行われた第17回世界囲碁選手権決勝の檜舞台に実に8年降りに日本のエース依田紀基名人(38才)が登場しましたが、朴永訓(バクヨンフン)五段(19才、韓国)に敗れました(2004.7.5)。3位は宋泰坤(ソンテコン)(17才、韓国)。ちなみに上記の囲碁年鑑(2001.6.1 日本棋院刊)を開いて韓国棋院の所を見ると(二段)の最後の所に朴永訓、(初段)の所に宋泰坤の名だけが小さく載っています。日本の常識では理解しにくいかも知れませんが、ドッグ・イヤー効果の下に、この2人の少年はわずか3年で超音速のスピードで日本の466人のプロ集団をゴボウ抜きして世界のトップに躍り出たのです。先頃行われた小林光一現NHK杯選手権者(51才)対宋泰坤(17才、韓国)の対局を見てその感を深くしました。

 オセロ世界選手権大会は1977年から開始され、以後オリンピックのように世界各国持ち回りで開催され、今年(2004年)は第28回がイギリスのロンドンで11月12日から行われます。その間に十代で世界チャンピオンになった丸岡秀範、谷田邦彦、石井健一、ポール・ラル(フランス)、為則英司等の名オセラーについては当物語で詳述しました。現在のオセロ世界チャンピオンはベン・シーリー(21才、アメリカ)です。

 オセロでは、全日本選手権大会(1973年から)、世界選手権大会(1977年から)、名人戦(1980年から)が毎年開催されて現在に至っておりますが、時代の要請を受けて名人戦の開催方式を挑戦制から自由参加・勝ち抜き戦方式に改めて2000年より即実施、これによって名人も日本代表として世界オセロ選手権に出場することになりました。それにしても、日本のオセロ名人=史上最強の男(挑戦制、不等式の理論)の神話が、ドッグイヤーの現代に於て、第20期(1999年)迄約20年間もまかり通っていたのは奇跡に近い事実でした。しかし、1999年10月30日、第23回世界オセロ選手権決勝3番勝負(イタリア・ミラノ)で終にその神話は崩れたのです(名人<世界チャンピオン)。

2. 21世紀のオセロの大会…名人戦(春)、全日本選手権(夏)、世界選手権(秋)

 シンプルな黒と白の石、目にやさしい緑の盤、“覚えるのに1分、マスターするには一生”(A minute to learn, a lifetime to master.)のキャッチフレーズで世に出たオセロは、ドッグイヤー効果も手伝って凄い勢いで日本全国そして世界へと普及して行きました。現在の日本のオセロ競技人口は6000万人(人口1億2000万人の半分)と推定されていますが、この数は3000年の歴史を持つ囲碁人口1000万人、500年の歴史のある将棋人口1500万人と比較してもダントツです。“底が大きければ山高し”で、20世紀に行われた世界オセロ選手権大会で日本代表は24回のうち19回の優勝をしております。

 しかし、世の中は常に変化して行きます。ダーウィンによれば、その変化に適応できない者は自然淘汰されます。1億5000万年もの間、我が世の春を謳歌した恐竜も7000万年前に突然絶滅しました。バブルの崩壊、趣味の多様化と激変する現代で、最も大切なのはファンとの固い結びつきです。年1回、誰でも予選なしで自由に参加できて、もし優勝すれば世界オセロ選手権大会に日本代表として派遣される現代の自由参加式オセロ名人戦(挑戦制は第20期で廃止)は、幾多のドラマを作りながら、好評です。オセロ名人戦では参加者全員が7局打ち、運がよければタイトル保持者(経験者)と公式戦で対等条件で打てる(囲碁や将棋ではタイトル経験者と一般ファンが対等条件で打つチャンスはありません。)

A. . 自由参加制オセロ名人戦無差別の部ベスト10一覧


第21期
2000.4.9(日)
第22期
2001.5.6(日)
第23期
2002.3.3(日)
第24期
2003.3.22(土)
第25期
2004.3.27(土)
1 坂口和大 村上 健 北島 秀樹 末國 誠 末國 誠
2 北島 秀樹 後藤 宏 長尾 広人 村上 健 平川 有宇樹
3 後藤 昭彦 滝沢 雅樹 久米 朋史 坂口 和大 村上 健
4 青木 和音 宮岡 環 谷田 邦彦 冨永 健太 冨永 健太
5 谷田 邦彦 末國 誠 滝沢 雅樹 後藤 宏 滝沢 雅樹
6 土田 英二 冨加見 友博 滝沢 信行 宮岡 環 石崎 光
7 金田 繁 後藤 昭彦 荒木 靖之 青木 和音 長尾 広人
8 滝沢 雅樹 青木 和音 金田 繁 久米 朋史 後藤 宏
9 長尾 広人 北島 秀樹 村上 健 佐藤 伸二 坂口 和大
10 B.ローズ 土田 英二 駒形 真之 亀本 修 谷田 邦彦

第21期…出場者98名(タイトル経験者は18名)、13才から86才迄と幅広さ、静岡から来られた前島なみ二段、十三子三段、細田規子さんは親子三代揃っての出場。唯1人7戦全勝の坂口名人は秋の世界選手権出場決定。


世界チャンピオン・村上八段と戦った小学生鍔本君。対局がすむと、村上氏はサラサラとその棋譜を書いてサインして鍔本君に記念としてプレゼント。

第22期…東電TEPCO地球館(千葉市)主催の小学生オセロ大会に出席した時、「5月の名人戦に出ると、チャンピオンと対局時計を使った真剣勝負を打てるかも知れないよ。」と聞いた鍔本竜一君はお母さんと一緒に名人戦に出場。当日の出席者94名中、小学生は鍔本君1人。しかし、何たる幸運、最初の対戦相手は、現役の世界チャンピオン・村上健八段でした村上八段は優勝し、世界チャンピオン・名人の2冠。鍔本君は敢闘賞の楯(小学生1位)

第23期…「バイオリンは子供も弾ける大人の楽器、オセロは子供でも楽しく打てる大人の思考ゲーム」というのが諸外国の考え方で、世界選手権は勿論、パリ国際オープン、ケンブリッジ国際オープン、ローマ国際オープン等も皆、無差別一色のオセロ大会です。日本のオセロ名人戦も前年迄は無差別の部一色でしたが、第23期から女子、マスター(40才以上)、中学生、小学生の部も新設して、その結果、大柳真咲五段(女子)、板垣賢一四段(マスター)、鈴木浩介四段(中学生)、石井宏和三段(小学生)が優勝。石井君(小5)は全日本小学生チャンピオン、小学生名人の2冠となり、品川区教育委員会から表彰されました(写真)。


唯1人の全勝で優勝。秋の世界大会出場決定の北島秀樹新名人(中央)と長尾新六段(右)、久米新五段。


品川区教育長表彰を浮けた石井宏和君と喜びの御両親。
 無差別の部の出場者は93名、木下央子二段(全日本女子4位)、浜岡三千代二段(全日本女子5位)はこちらに出場して善戦健闘、36位と79位。

 第9回全日本オセロ選手権無差別の部決勝(1981年夏)で丸岡秀範六段(秋の世界大会優勝)に2石負けして以来、苦節21年、終に念願のビッグ初タイトルを獲得した北島秀樹新名人は、秋にオランダで開催される第26回世界オセロ選手権大会に初出場決定長尾広人三段(埼玉、六段へ)、久米朋史初段(福島、五段へ)等の新人の活躍が光りました。

第24期…195名(無差別117名)が参加、山中真美五段(女子、愛知)、東條淳三段(マスター、神奈川、四段へ)、高崎悠太郎二段(中3、東京、四段へ)、石井宏和三段(小6、東京、連覇)が優勝。無差別は末國誠七段が優勝(3度目、八段へ)。


女子の部

マスターの部


中学生の部

小学生の部

 女子の部は、3強(山中真美、佐野洋子、大柳真咲)と新3強(木下央子、高野淑美、木下浩子)の火花が飛ぶ競り合いが見物。今回の女子の部の順位は、山中、佐野、大柳、木下浩子…ですが、一方木下央子(全日本女子チャンピオン)・高野(全日本女子2位)さんは、無差別の部に出場して34位と42位。

 マスターの部では40才の新人・東條三段が初優勝。高崎君も石井君もあと8日でこのクラス卒業だが、高崎君は親子3代入賞で、おじいさんもお父さんも為し得なかった“優勝”を見事に実現、石井君は小学生の部で全日本、名人、全日本、名人と4回連続優勝の新記録で、今度は東京都教育委員会から表彰

第25期(2004.3.27)…連覇の末國誠名人に世界一奪回の期待

 無差別の部はボクシングならヘビー級、全国から参加したオセラーは112名、1つの大きな部屋で、112名のオセラーが規定の位置につき、全員が対局時計を使用して1秒たりとも無駄使いせず、一斉に戦う光景は圧巻です。同時進行なので、全員が勝ち残りオセロ方式で7局打ち終った時点で7連勝が1人出る、それが即・名人1位から112位迄ピタリと順位が出るのも勝ち残り方式名人戦の特徴。レベルの高さは第24、25期ベスト10の顔ぶれを見ても一目瞭然(世界チャンピオン経験者4人、全日本チャンピオン経験者8人、名人経験者5人という勇ましさ)。大会規模、内容は全日本選手権、世界選手権と比べて遜色なし。

 その中にあって“終盤の魔術師・末國誠”は第24期、第25期を連覇したのです。勝ち残り方式で連覇する確率は、全日本選手権大会や名人戦では16384分の1、世界選手権大会で2500分の1という計算。実際、今迄31回行われている全日本オセロ選手権大会無差別の部、27回開催されている世界オセロ選手権大会の中で、連覇を実現させているのは為則英司の3連覇、坂口和大の2連覇だけです。

 “ヴェニスの商人”の劇中で、シャイロックは「ダニエル様の再来だ」と叫びましたが、勝ち残り方式で2連覇の快挙を成しとげた末國名人の世界大会出場の報を聞いて「鬼神タメノリの再来か?」と外国のオセラー達は怖れおののくでしょうか?答はNoです。「鬼神・タメノリ」と外国のオセラー達が怖れおののいていたのは15年も前のこと、その時、現在の世界オセロチャンピオンのベン・シーリーは6才でした。ドッグ・イヤーの現代は15年前は昔の話、外国のオセラー達は現実のみを評価します。この所3年連続して世界オセロ選手権で負けている日本が、再び世界のオセラー達の注目の的になるためには、まず今年の秋の世界選手権で日本代表が優勝するのが先決問題。末國誠名人の健闘に期待

 新設されて早くも3期目の他の4部門では全員が初優勝。女子の部では佐野洋子、木下浩子、青木光幸、工藤明子…の順で、佐野洋子五段が決勝で木下浩子二段を12石差で破って唯1人7連勝で第3代女流名人に。“副賞のデラックス・オセロ(会長賞)”は、今迄貰ってない人という条件なので、3位の青木光幸初段(栃木)が獲得。木下浩子さんは1月3日の第20回記念オセロ王座戦女子の部1位でデラックス・オセロを獲得ずみ。無差別の部では2位の平川有宇樹五段が獲得(他の3部門は1位が獲得)。マスターの部は香取通浩三段(埼玉、四段へ)、中学生・藤野公茂二段(東京、四段へ)、小学生・永井真二段(静岡、小5、三段へ)が初優勝。

誰でも気楽に参加できるオセロ名人戦
(無差別の部に初参加した地方在住の2人のオセロファンの例)

 全日本選手権では出場枠(無差別の部は64名)があるので、本場・本戦の雰囲気に触れるチャンスのないオセラーは沢山います。名人戦なら予選がないので強弱に関係なく誰でも出場でき、運がよければ1回戦でチャンピオン経験者(七段以上)と対戦できるかも知れないし、本場のオセロをじかに体験できます。たとえ、3連敗、5連敗しても、勝ち残りオセロ方式は、次に3連敗、5連敗中の対戦相手を自動的に選んでくれるので、7局も打つうちには1局や2局勝てるかも知れないし、3000円の出場料で昼食も付くし、1日ゆっくり本場のオセロの雰囲気も楽しめる。さらに、優勝すれば、第28回世界オセロ選手権大会(ロンドン)に日本代表として派遣されるという可能性まであります。  「チャンピオン経験者と1対1で対局時計を使い1局40分もかけて真剣勝負を打てるチャンスは待っていては絶対来ない。」といって、玉野井秀典、海老澤佳之の両氏は、茨城県水戸市からスーパーひたちに乗って上京、第25期オセロ名人戦無差別の部に初参加しました。しかし、1回戦で当った相手は二段氏と初段氏で、結果は下記の如し。

1回戦 玉野井秀典(茨城) 0石 64石 山岸健大(二段、埼玉)
海老澤佳之(茨城) 0石 64石 西田啓太(初段、新潟)

0石対64石とは、盤面から自分の石が全部消えてしまうパーフェクト負け今迄長い間オセロを仲間と打っていますが、こんなことは初めての経験です。これには両氏共度肝を抜かれました。こんな強いオセラーが世の中にいたのか両氏は、山岸二段、西田初段の2回戦以後の戦いぶりにも注意を払いました。

2回戦 山岸健大二段 17−47 村上健九段 …1勝同士の組合せ
3回戦 西田啓太初段 18−46 末國誠八段 …2連勝同士の組合せ

結局、西田啓太初段は4勝3敗(+8石)で50位、山岸健大二段は3勝4敗(+12石)で66位、言わば中堅の打ち手。

1位、末國誠八段7連勝(+174石)で連覇(昨年も7連勝)。

3位、村上健九段6勝1敗(+144石)その1敗は対末國戦。

 一方、玉野井、海老澤両氏は6局打った時点で共に6連敗、他に6連敗の者はなく、7回戦は両氏が対戦。玉野井37−27海老澤となり、結局玉野井秀典1勝6敗(-245石)110位、海老澤佳之7連敗(-306石)112位。

 玉野井、海老澤両氏の感想「出場した事自体楽しかった。とても勉強になり有意義な1日だった。北海道、東北、京都、大阪、広島、九州と全国から腕自慢のオセラーがこれだけ(112名)集る無差別のレベルは高くて終に1勝もできなかったのは残念だが、こうやって選ばれた末國八段が世界大会に日本代表として出場する訳で、世界オセロ選手権大会そのものが急に身近に感じられるようになった。勉強して強くなって来年も出場したい。」

A. II. 自由参加制オセロ名人戦無差別の部 特選譜

第21期名人戦特選譜 …全勝優勝・坂口和大(七段へ)
(2000.4.9.日 左の選手が黒番)


闘牛4回戦で当たった本局が実質上の優勝決定戦となった

虎2勝利目前の失着がオセロ史に影響を与えた

虎2終盤20手で18石追い込んで引分にした谷田七段の底力
北島秀樹 28 36 坂口和大
(五段・東京)   (六段・東京)
後藤昭彦 29 35 長尾広人
(五段・埼玉)   (三段・埼玉)
谷田邦彦 32 32 土田英二
(七段・東京)   (五段・茨城)


実戦原図
(後藤対長尾戦)
は?
 5連勝は坂口、ローズ、後藤の3人。6回戦は坂口対ローズ、後藤対長尾(4勝1敗)。後藤にとって少年チャンピオンを取って以来初めて訪れた決勝進出への絶好のチャンス(実戦原図。Cなら、以下白C1、黒ア、白☆…で黒2石勝)もし、決勝も勝てば初の名人位、続いて秋の世界オセロ選手権大会出場、世界チャンピオンも夢でないしかし、現実は、実戦原図からをア(大悪手)と打って逆転負け。

第22期名人戦特選譜(2001.5.6.日)…全勝優勝・村上健(九段へ)


決勝(6連勝同士)闘牛

5回戦(全勝同士)

5回戦(全勝同士)闘牛
後藤宏 (六段・埼玉) 29
村上健 (八段・東京) 35
世界チャンピオン
宮岡環 (五段・東京) 54
滝沢雅樹 (八段・新潟) 10

 7は宮岡新手。終盤57、58、59の3連打が痛烈
末國誠 (七段・東京) 16
村上健 (八段・東京) 48

 この1敗だけで末國は6勝1敗でゴール。

(注)… 学生チャンピオン宮岡環の快進撃も6回戦で終にストップ。
6回戦 宮岡 環 21−43 村上 健

第23期名人戦特選譜(2002.3.3.日)…全勝優勝・北島秀樹(七段へ)


決勝虎C

準決勝虎2

準決勝虎B
北島秀樹 (六段・東京) 40
長尾広人 (三段・埼玉) 24
谷田邦彦 (七段・東京) 13.5
長尾広人 三段 50.5

痛烈・白の4連打
北島秀樹 六段 33
久米朋史 (初段・福島) 31

 際どい2石差、しかしそれは天地の差

第24期名人戦特選譜(2003.3.22.土)…全勝優勝・末國誠(八段へ)


黒の華麗な打ち廻し
(6連勝同士)

名局(5連勝同士)兔1

名局(4連勝同士)虎2
末國誠 七段 42
後藤宏 六段 22
坂口和大 九段 31
末國誠 七段 33
村上健 九段 31
末國誠 七段 33

 名人になるための絶対条件は本戦7連勝7回戦の途中で1敗すればアウトでもう名人にはなれません。7連勝は唯一人だけしかでません。116名は7回戦の途中で総て脱落。末國誠7連勝の道中も、山あり谷ありの試練の連続だったことは、上掲3局を並べて頂ければ明らかです。


若さの激突闘牛

ベスト10入りしたベテラン同士虎A

1回戦で九段と4級が当った虎くずれ
平川有宇樹 五段 27
青木和音 六段 37

 若さ溢れる十代の2人。21世紀オセロ界期待の星。
佐藤伸二 五段 27
亀本修 四段 37

 亀本氏は中学生チャンピオンになって四段を取ってから23年。
村上健 九段 64
宮野翔一郎 4級(兵庫) 0

 九段と当って玉砕はよい経験。宮野4級は109位だった。

第25期名人戦特選譜(2004.3.27.土)末國誠名人7連勝で連覇(九段へ)


決勝(6連勝同士)虎1

5連勝同士

4連勝同士
平川有宇樹 五段 28
末國誠 名人 36

 決勝戦にふさわしい激闘の名局。終盤の末國名人の打ち回しは見事
平川有宇樹 五段 33
後藤宏 七段 31
(全日本チャンピオン)

 大舞台で戦うのは3度目。終に新鋭平川、対後藤戦に初勝利
末國誠 名人 54
村上健 九段 10

 終盤に黒のパンチが3度も入って大差になった。結局、村上九段は6勝1敗。

他部門のチャンピオン奮戦特選譜


3連勝同士牛(快速船)

1勝同士兔1

1勝1敗同士兔1
高崎悠太郎 四段 42
坂口和大 九段 22

 高崎君(高2)は2年前の中学生名人。5勝2敗・15位(2敗の相手は末國誠・冨永健太)の堂々たる成績、21世紀オセロ界の若きプリンス(グランドオセロも二段)。
石崎光 四段 24
佐々木惣平 三段 40

 佐々木氏はこの時、現役のグランドオセロ名人グランドオセロ七段。5勝2敗(平川、長尾)で17位。石崎氏はこの後5連勝(谷田邦彦、後藤宏にも勝)して6勝1敗・5位。
佐野宏隆 (二段・静岡) 21
高野淑美 (五段・長野) 43

 高野さんはこの時、現役の全日本オセロ女子チャンピオン、無差別の部112名中4勝3敗43位は女子1位。
 第3期グランドオセロ名人戦(2004.7.19)で準優勝して女性初のグランドオセロ六段。

(注)……第3期グランドオセロ(10路×10路)名人戦は、2004年7月19日(百人物語第18回でも予告)に佐々木惣平グランドオセロ名人、末國誠オセロ名人も参加して熱戦を展開。長尾広人氏(オセロ六段)が初優勝してグランドオセロ名人・グランドオセロ七段になる。準優勝は上記の高野淑美さん。詳細はオセロニュース82号(第32回全日本オセロ選手権大会特集号)をご覧下さい。



グランドオセロ名人
佐々木惣平氏

3. オセロ最近の話題

第28回世界オセロ選手権大会(於ロンドン 2004.11.12〜 )日本代表3人が決定

1. 末國誠九段(名人)…第25期名人戦無差別の部優勝(2004.3.27)

2. 為則英司九段(全日本チャンピオン)…第32回全日本選手権無差別の部優勝(2004.7.18)

3. 木下央子五段(全日本女子チャンピオン)…代表者決定戦で女流名人・佐野洋子五段に2勝1敗で勝つ(2004.7.19)


第32回全日本オセロ選手権
無差別の部決勝1番勝負
兔1

世界オセロ選手権日本代表決定
3番勝負第3局(双方1勝1敗)
虎1
坂口和大 (九段・東京) 27
為則英司 (九段・京都) 37
佐野洋子 18
(女流名人)

木下央子 46
(全日本女子チャンピオン)

 日本オセロ連盟主催の全国規模の大会(名人戦、全日本選手権)の無差別の部の優勝者が七段、2度優勝すれば八段、3回以上の優勝者が九段です。現在オセロの九段は4人いて、いずれも一騎当千の強者達です(終盤の魔術師・末國、鬼神・為則、美学の坂口、読みの村上)。決勝に進出するのさえ容易でないのに、全日本オセロ決勝・坂口対為則がこれで3度目(為則の2勝1敗)という物凄さ

 末國九段、為則九段と女子最強といわれる木下央子五段の3人が、ロンドンで11月12日から開催される第28回世界オセロ選手権大会でどんな活躍ぶりを見せるか、日本のオセロファンは今から胸をワクワクさせて見守っています。

第32回全日本オセロ選手権決勝1番勝負のこの場面

…オセロのX打ちは限りなく奥深く、永遠の謎である


 “X打ちを制する者は世界を制す(オセロ格言)”。黒の坂口九段は、1図でX打ちを打つ絶好のタイミングを逃し逆転されました(2図)。決勝、黒・坂口対為則戦からの取材(1図・2図)

1図(実戦) は?
2図(実戦)、X打ちを逃すは悪手(10石損)で逆転
3図(1図からの正解手順)
黒32−32白




 “オセロとは悪手を打った方が負けるゲームである(格言)”。1図は形勢互角で、これから悪手を打った方が負けになるでしょう。しかし、1図から双方共悪手を1手も打たなかったらどうなるのでしょうか?その時は3図の手順を経て引き分けになりますが、“引き分け勝”の権利は黒なので坂口九段の優勝になった筈です。1図の局面で、黒が左上X打ちを打たなかった(打てなかった)のがオセロの歴史を変えたのでした。

第25期オセロ名人戦決勝1番勝負のこの場面

…超難解な終盤のこの局面で黒(平川)は間違えた


 4図は黒・平川有宇樹対末國誠戦(決勝)の終盤。短い制限時間内でこの超難解な局面を読み切ることは不可能に近く、迷っていれば秒刻みで持時間は減って行く。“迷ったらA打ち(オセロ格言)”という訳で打ったのA打ちが悪手(5図)でこの1手で逆転

4図(実戦) は?
5図(実戦)、のA打ちは悪手で逆転
6図(4図からの正解手順)
黒34−30白




 格言は当る確率は高いが絶対ではありません。A打ちしたために負けてしまって、オセロの歴史が変ったとしても、それは仕方のないことです。

第32回全日本オセロ選手権準優勝の坂口和大九段と家族


史上3人目の九段位の免状を授与された坂口氏

 最近の坂口氏と家族。美和ちゃん(1才)は王女様。家庭に仕事(NTT東日本)に趣味(オセロ他)に充実の毎日。






(2004年8月15日 長谷川五郎 記)




百人の物語 > (第20回)21世紀のオセロ展望

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